| MBは特にその性能について語られることの多い車ですが、デザインの優秀さも見逃せません。何年たっても飽きのこないデザインはMBの魅力の一つであり、日本車やアメリカ車では考えられないモデルチェンジサイクルの長さにも関らず、古臭く見えないのは車体のデザインが優れている証拠でもあります。MBのボディデザインといえばどちらかというと保守的なイメージを抱く人も少なくないでしょう。確かに「長い間飽きない」為にはあまり派手なデザインは向きません。しかし、長いMBの歴史の中ではまさにエポックメイキングと言えるデザインも多く生まれました。
初代SLモデルである300SLはガル・ウイング(かもめの翼)と呼ばれるはね上げ式のドアを装備していました。これは50年代当時としては画期的な鋼管チューブによるスペースフレーム構造をシャーシに採用した結果、通常のドアを取り付けられるだけの開口スペースがなく、やむなく考え出された構造だったとされていますが、それにしても思い切った構造を採用したものです。そしてそのガル・ウイング構造を前提に考えられたと思われるボディデザインも非常に流麗で美しいものでした。
60年代になると今では「縦目」と呼ばれる一連のシリーズが発売されます。このデザインも当時としては斬新なものであったことは想像に難くありません。また縦目に関しては現在でも世界中にマニアが存在し、未だにその魅力が失せていないことがわかります。そして縦目SLとして知られる113に採用されたパゴダ・ルーフも人々の垂涎の的となり、後継モデルである107にも継承されました。
縦目シリーズの後、しばらくは角形2灯ヘッドライトの時代が続きましたが、95年秋から投入されたW210(現行Eクラス)からはセダンとは思えないスラントノーズのボディデザインとともに斬新な丸形4灯ヘッドライトが採用されました。すでに某国産メーカーからはこのデザインを真似たモデルが発表されており、MBのデザインが自動車業界に与える影響力の大きさがうかがえます。
近年のMBデザインを語る上でかかせない人物を紹介しておかなければなりません。サッコデザインスタジオの代表であるブルーノ・サッコは、70〜90年代のMBのデザインに多大な貢献をしました。最初はダイムラーベンツ社から外注という形でデザインを委嘱されたブルーノ・サッコですが、後にダイムラーベンツ社のデザイン部長も務め、数々の優秀なデザインをMBに提供しました。その中でも一番有名なのがサッコ・パネルでしょう。これは80年代末からW124(先代Eクラス)やW201(190E)に採用されたボディの下半分を覆う樹脂製のプレートで、跳ね石からボディを保護すると共に外観上の大きなポイントとなるサッコ・パネルは90年代MBのスタンダードな装備となりました。
その他ではW107(先代)、R129(現行)という歴代SLやTEシリーズのデザインもブルーノ・サッコによるものであり、特に129に関しては設計者としても名を連ねています。 |