CLK-GTR "Road-Going Version"(1998〜)
発売時参考価格:約¥100.000.000

CLK-GTR.jpg

Chassis
Data
全長
(mm)
全幅
(mm)
全高
(mm)
ホイール
ベース
(mm)
トレッド
(mm)
サスペンション
形式
重量
(kg)
4855 1950 1100 2670 F:不明
R:不明
F:Wウィッシュボーン
R:Wウィッシュボーン
1000

Engine CLK-GTR
R.G.V.
DOHC.V12
6898cc
612ps

 1996年にダイムラー・ベンツ社とAMG社(当時)の協同プロジェクトとして発足した「CLK-GTRプロジェクト」は、FIA・GT選手権のホモロゲーション(公認)を獲得しうる「世界最速の乗用車」をメルセデス・ベンツの名のもとに送りだし、同選手権GT1クラスにおける完全なる勝利を勝ち取るというものでした。FIA・GTカーのレギュレーションの基本は「片面1ドアまで、座席4つまでの公道走行に適法の車両」というもので、GT1クラスの場合は1台以上の公道仕様車を製作して公認を受ける必要があり、市販価格の上限もFIAによって規定されています。この公道仕様車をベースに製作された車両のみがレギュレーションに合致し、レースへの参加が認められるわけですが、1997年シーズンの同選手権に初参戦したCLK-GTRのレース仕様車は、ベルント・シュナイダーのドライブによって参戦1年目にして早くも総合優勝に輝いたのです。

 初レース参加から数カ月後の1997年秋、フランクフルトで開催されたIAAモーターショーにおいて、CLK-GTRのロード・ゴーイング・バージョン(以下R.G.V.)が発表されました。そして同時に、事実上レース・カーそのものであるR.G.V.をAMG-メルセデス・ブランドで市販することも正式に発表されたのです。その後量産化に必要な人員配置や生産計画がたてられ、量産開始は1998年の夏からと決定されました。生産の全ての工程はAMGのルートヴィヒスブルク-オスヴァイル工場で行われ、1台の車両が完成するまでには約4週間が費やされます。完成後もすぐに出荷されることはなく、全ての車両が事前に作成されたプログラムに沿って一般道、及びサーキットを実際に走行しながら、多項目に及ぶ最終チェックを受けた後にようやく出荷されるのです。

 純レーシングカーであるF1とは違い、GTカーは屋根を備えタイヤはボディに覆われ、バックミラーやヘッドライト、ウインカーといった補器類まで備えていなければなりません。つまり完全なる公道仕様車をベースとしたレース・カーでなければいけないわけですが、実際には公道を走行する事も可能なレース専用車を作るという、逆の手順で製作されるケースが多く、CLK-GTRも例外ではありません。通常レース専用車以外では決して採用されることのない設計であるCLK-GTRは、スチール製ロールケージ+カーボン・ファイバー・コンポジット(CRP)によるモノコックシャーシと、同じくCRPによる完全合成ボディシェルを備えており、非常に軽量でありながら高い安全基準を満たしています。フロントとサイドにCRP製クラッシャブル・ボックスを備えるこのボディの安全性はクラッシュ・テストでも既に実証されており、CLK-GTRはサーキットよりも危険度が高いと言われる一般公道上においても、充分に安全に走行出来る車両であると言えるでしょう。

 エンジンはS600(W140)などに搭載されたDOHC-V12エンジンをベースに、AMGによってボアアップ&チューンが施された7Lエンジンをミッド・マウントします。最高出力はレース仕様の場合650ps前後となりますが、R.G.V.ではやや控えめな出力が設定されており、公道での使用を前提としたトルク重視のセッティングとなるようです。しかしFIA・GTのレギュレーションで定められた最低重量:900Kgを基準に設計されたCLK-GTRの重量はわずか1000Kgであり、0-100Km/h加速:3.8秒、0-200Km/h加速:9.8秒、最高速度:320Km/hという走行性能を発揮します。またミッドシップであるために巨大なエア・インテークがルーフ上に設置されており、ラジエーターはサイドに設置されました。

 トランス・ミッションはAMGが開発した5速のシーケンシャル・マニュアル・シフトとされ、4枚のカーボン・プレートを持つ乾式クラッチと組み合わされます。またブレーキは2系統のラインとABSを備えており、マスターシリンダーはタンデム式、キャリパーはフロント:6ポッド/リア:4ポッドの対向ピストン、ローターは前後ともにベンチレーテッド・ディスク、パッドはカーボンパッドとなっています。

 CLK-GTRのボディ/シャーシ構造が非常に優れた安全性を持っている事は前述の通りですが、そのほかにも特徴的なパッシブセーフティ技術の採用が見られます。まずガソリンタンクはシャーシ前端/後端ではなく、モノコックの中央部に搭載されており、衝突時に引火する危険性を減少させています。コクピットのウィンドウ類は、レース・カーの場合軽量な樹脂製を採用するのが普通ですが、CLK-GTRのフロントウインドウには非常に強度の高い合わせガラスが採用され、比較的危険性の少ないサイド及びリアの窓のみ軽量なポリカーボネート製となりました。またステアリング・ハンドルにはSRSエアバッグも装着されています。

 CLK-GTR R.G.V.は受注生産ではありますが、生産可能台数に限りがあるために全ての顧客が入手出来るわけではありません。従って正式な販売価格は発表されていませんが、1998年8月現在の販売価格は約1億円と予想されます。