A-Class (Type168 1997〜)
発売時参考価格(万円):'99年A160(265)

A-Class.jpg

Chassis
Data
全長
(mm)
全幅
(mm)
全高
(mm)
ホイール
ベース
(mm)
トレッド
(mm)
サスペンション
形式
重量
(kg)
3575 1719 1575 2423 F:1503
R:1452
F:ウィッシュボーン+
マクファーソン
ストラット
R:セミトレ
1020(A140)
〜1095(A170CDI)

Engine A140 A160 A170
CDI
SOHC.直4
1397cc
82ps
SOHC.直4
1598cc
102ps
DOHC.直4
1689cc
90ps

 現在のAクラスの試作車であるヴィジョンAというコンセプトカーがデビューしたのは、1993年のフランクフルト・ショーでした。地球環境への適合、小サイズ化、コストダウン、新しい顧客層の獲得、安全性の向上、といった21世紀にむけて自動車メーカーが抱える多くのテーマを解決するヴィジョンAは、90年代後半には市販化することを宣言していたのです。

 かくして1997年(日本発表は1998年)に正式発表されたAクラス(W168)は、各所にMBらしい独創的な発想を盛り込んだものとなりました。最も特徴的なのはサンドイッチ構造と呼ばれる二重のフロアパネルで、フロントにマウントされたエンジンの一部を上下2枚のフロアパネルの間に潜り込ませることで、全長をおさえるとともに衝突時にエンジンが室内に飛び込む危険性を無くし、省スペース化と安全性の両方に貢献しています。またヴィジョンAの発表時には塩化ナトリウム/ニッケル・バッテリーを用いた電気駆動(EV)も予定されていましたが、将来この電気駆動システムが実用化される際に、二重フロアの間はバッテリースペースとしても使われることになります。排出ガスの低下や燃費の向上を考える上で最も効果的である車体の小型化を最優先させたAクラスは、このサンドイッチ構造や独特なボディ構造の採用により、Aクラスよりもボディサイズの大きいCクラスをも凌ぐパッシブ・セーフティ機能を手に入れ、小型車を開発するにあたって最大の難関である安全性の確保をクリヤーしました。またアクティブ・セーフティ機能として運転席・助手席エアバッグ、サイドバッグ、ABS、BAS、ESPなども装備されています。

 全長4mにも満たないAクラスは、キャビン前後のスペースを徹底的に削減することで、5名乗車が可能な充分な室内スペースを確保しています。また運転席以外の座席は脱着式とされ、使用状況に応じて荷物の積載量を増やすことも出来ます。サスペンションはフロントがWウィッシュボーン、リアは室内スぺースを考えてセミトレーリングアームとされ、ブレーキはフロントにディスク、リアにドラムを採用。エンジンはAクラスのために1.4L、1.6L、1.7L直噴ディーゼルの3種類を新たに設計、電子制御5速ATと組み合わされます。ガソリンエンジンの2種はともにSOHCですが、これはほかのモデルで採用されているような1気筒3バルブのものではなく、スタンダードな1気筒2バルブのエンジンです。(1998年現在、日本仕様はA160のみです)

 1997年11月、Aクラスについてのショッキングな報道がありました。1997年のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー選考会のテスト走行中に起きた横転事故に端を発した、Aクラス初のメーカー・リコールは、Aクラスの一時出荷停止という事態にまで発展したのです。この事故が発覚した直後には1000台を超えるキャンセルが相次ぎ、ダイムラー・ベンツ社はAクラスの欠陥が完全に解決するまで出荷を停止することを発表。解決しない場合は販売中止もありうるということでした。具体的なリコールの内容は時速60Km以上で走行中、急激にハンドルを切ると車体がリフトすることがあり、最悪の場合は横転することもあるというもので、これに対してMBは新たな対応策を考案。結果として若干のローダウンによる低重心化、サスペンションのバネレートとスタビライザーの見直しによるロールの抑制、ESPの標準装備化などによって問題は無事解決し、1998年初頭には再び出荷が開始されました。また既に販売済みであった車両についても回収し、同様の改良が行われています。