三ツ星倶楽部 其之八 特別編 How to buy Mercedes-Benz Parts 3/3 信用できる筋から購入すべし!
2011年6月30日 – 12:00 | 0

構成/田村十七男・芥川貴之志 撮影/山田裕之

AKU さてやってまいりました。こちらはボッシュ社の車両診断機を備えた、指定サービス工場です。今回はこちらのエンジニアの方にも協力して頂いて、コピー部品の実態を暴いてみようと思います。
170 その診断機はコピーじゃないよね?
AKU 当たり前じゃないですかっ。失敬なっ!!
170 あ、ゴメン。もはや疑心暗鬼になっちゃって。この運転席に付いてる機械は何なの?
AKU これは送信機だそうです。室内にあるECUから信号を取り出し、Bluetoothでテスターに情報を送るんですね。
170 へぇ、すごいね。ハイテクだね。

AKU 今回テストするのは、エアマスセンサー。このパーツは、エンジンに取り込む空気量を計るもので、そのセンサーが出力した電圧に合わせてガスを噴射する量を調整するんですね。ということは、エアマスセンサーが狂えばエンジン回転が不安定になるわけです。
170 つまり、重要な部品であると。
AKU そういうこと。なのに意外とトラブルが多く、純正部品は値段も高いので、コピー部品が数多く出回っています。
170 いくらくらいするの?
AKU 車種によっても異なりますが、純正部品の定価が10万円をちょっと切るくらい。
170 結構するんだね。それがコピーだと?
AKU 1万円台からありますね。そこで用意したこの3種類。どれが本物かわかります?
170 もう、その質問は勘弁して。ってか、見た目じゃ全然わからないからさぁ。

AKU 本当にそうですよね。特に電子部品は判別がつきにくいんですよね。正解は、一番右がメルセデスベンツ純正部品、真ん中がBOSCH製の本物、左が偽物です。
170 ベンツ純正と、BOSCHの本物っていうのは何が違うの?
AKU 基本的には同じもので定価もだいたい同じですが、流通経路が違うので実売価格に差があります。メルセデスベンツ純正は基本的に定価販売ですが、BOSCHだと3割引、4割引は当たり前で、スピードジャパンの様なショップだと半額以下で売っている場合もあります。これがいわゆるOEM部品と呼ばれるものです。
170 偽物はさらにその半額というわけか。
AKU そういうこと。じゃ、とにかくテストしてみましょう。まずは現在車両に付いている本物を計測してみます。断続的にスロットルを吹かしてみると、エンジン回転の上昇と下降に合わせて山なりの曲線が描かれますよね。

170 ふむふむ。エア量もそれにシンクロしてるね。エア量が上がった直後にエンジンスピードも上がると。
AKU 次にコピー。同じようにスロットルを吹かすと……。
170 おや? 曲線にいびつなポイントが出てきたぞ!?
AKU エンジン音にしても、スロットルを吹かした瞬間にもたつくところがあるじゃないですか。センサーの感度が低いんでしょうね。これがコピー部品の実態です。

170 正体見破ったり、って感じ。たださ、テストでは激しくスロットルの開閉を行ってみたけれど、街中ではここまで荒い操作はしないよね。となると、もしコピー部品だと知らずにいたら、気づかないままだったりするんじゃない?
AKU エアマスセンサーに関して言えば、そういう可能性は十分にありますよね。女の人なんかが普通に街中で乗ってて、じわっとアクセルペダルを踏む限りでは、エンジンの不調は感じられないかもしれない。だけど怖いのは、粗悪部品の多くは寿命が短いことじゃないですかね。
170 と言うと?
AKU 最初はそれなりにまともに動作していたとしましょう。でも時間の経過とともに、段々おかしくなってくる。たいがいの人は、何かおかしいなと思っても、替えたばかりの部品は疑いませんよね。そうすると、どこに不調の原因があるのかわからなくなる。さらに正しく動作しない部品を付けたことで、ほかの部分に影響が出る場合もあります。Aの個所は新品部品に換えた。そしてBの個所にトラブルが起きた。するとたいがいの人は、Aの個所を疑いませんよね。Bの個所を調べ、あるいはCやDまでチェックし始める。こうなったら堂々巡りです。本当の原因はつかめない。
170 なるほどね。そりゃ厄介だよなあ。でもさ、どうやったらコピーを見破れるんだろ?普通はこうしてテスターでチェックなんて、出来ないじゃない。

AKU 見た目に関して言うと、例えばメルセデスに納入する部品にだけ刻まれる記号が、OEM部品には本来無いはずなのに、偽物にはあったり……。
170 すでにややこしい。
AKU そうなんです。よほどの部品知識がないと、本物かどうかなんて判断できない。プロでも両方並べて比較しないとわからないはずです。となると、信用できる筋以外からは部品を買わない、というのが恐らく唯一の手段なんですよね。
170 昔のクルマ屋さんは、よそで買ってきた部品の取り付けは受け付けてくれなかったよね。それは信用できないものに触れない職人の意地でもあったし、だからこそ信頼できた。けれど最近ではそういう商売ができないらしいね。ネットオークションがここまで浸透しちゃって、誰もが安いパーツを簡単に入手できるようになったから。

AKU そのネットオークションではコピー品が出回っている。実際、工場がお客さんの持ち込んだ部品を取り付けてみたら、まともに動作しなくて治らなかったり、寸法がおかしくてアライメントが取れなかったりして、お客さんとトラブルになるケースが頻繁に起きてるみたいです。
170 情報量が増えた分だけ、それを精査する能力がユーザーにも必要になってるんだよね。いずれにせよ自動車部品の世界でも粗悪な偽物やコピー品が多数存在しているわけで、メルセデスはその格好のターゲットになっている、ということかぁ。
AKU その事実を知り、どう対応するかは、個々の判断に委ねられています。とにかく信用できるルートを得るしかないですね。
170 オーナーのみなさん、くれぐれもご注意を!

今回はいつもと趣向を変えて、車ではなく部品に注目してみましたが、いかがでしたでしょうか?昔に比べてメルセデスベンツが身近になった分、部品市場で偽物や粗悪部品が蔓延っている実態が、おわかり頂けたかと思います。愛車と末永くカーライフを楽しむためには、部品選び、ひいてはショップ選びが、とても重要なのです。読者の皆様におかれましては、安さに釣られて粗悪品をつかまされぬよう、くれぐれもお気をつけ下さい。

続きを読む »
三ツ星倶楽部

MB-Net TV 

ホーム » 三ツ星倶楽部

三ツ星倶楽部 其之四 W109 300SEL 6.3 2/3 誰が乗ったんだ?

投稿者: 投稿日: 2010年5月8日 – 00:000

構成/田村十七男・芥川貴之志 撮影/山田裕之

170  興奮冷めやらぬまま、試乗した感想を述べますけれども、パワフルだよねぇ。片手でビルをなぎ倒すような力強さ。

AKU 今度はゴジラですか。トナオさんの話だと暴力的なイメージが強くなりそうですが、現代的な感覚では過激とは言えませんよね。もちろん当時としては世界最強クラスのセダンでしたが。

170  ごめんごめん、クルマというより船に近いパワー感覚なんだ。それを伝えるボキャブラリーが乏しいのね。要は、大排気量&大パワーのおおらかさが気持ちいいんですよ。チューニングエンジンにありがちな神経質さはありませんと言いたいだけ。

AKU 実際、高速道路で走らせると相当速いですよね。しかもブレーキは前後ベンチレーテッドディスクでしっかり利くし。そういう意味ではまさに高速船て感じ。エアサスも意外にフラットな乗り心地でしょ?

170  そうそう、空気バネと聞くとフワフワしているようなイメージがあるけど、そんなことはない。滑らかなんだね。しかも重厚感が漂う。

AKU 実はこの300SEL6.3、あのAMGが初めてレースに参戦させたクルマなんですよ。

170  ああ、やっぱり。当時としてはモンスターと言える内容だもんね。

AKU 1971年のスパ・フランコルシャン24時間耐久レースでした。6.3リッターを6.8リッターに拡大させたり、オーバーフェンダーを付けたりはしていましたが、ミッションはATだったしノーマルに近いクルマでしたね。それでも驚くことにクラス優勝、総合でも2位という華々しい結果を残したんです。その驚異的なチューニングパフォーマンスが認められて、後のAMGの名声が生み出されました。

170  メルセデスのレース史にとっても大事な1台なんだなあ。でも、エンジンをかけず、インテリアをながめている限りでは荒々しさどころか高級感しかないよね。ウッドパネルの美しさにはため息が出ちゃう!

AKU それ、1枚物の板から加工しているんですよ。ガラス製のメーターなんか時代を感じさせるけれど、そこがまたシブいんですよね。中にスチールを仕込んだベークライト製のハンドルもいい雰囲気です。ステアリングはパワステで、パワーウィンドーも標準装備。おまけにサンルーフまで電動で開閉させるっていうんですから、この時代にあってとんでもない高級車です。

170  ちなみにオレのクルマは、いまだにパワーウィンドーがありません。

AKU もひとつ時代的な特徴をお話しますと、現存している300SEL6.3はダーク系のボディカラーが少ないんです。この時代、メルセデスのSクラスは多くが公用車やハイヤーに利用されましたが、それらのほとんどが黒で、逆に個人所有で大事に乗り継がれてきたものは、だいたい明るい色目なんですね。というのは、ダーク系のクルマに乗っていると業務用と間違われるから。公用車の中古を買った人も、白やシルバーに塗り替えちゃうことが多かったようです。6.3は趣味性の強いクルマですから、公用車として使われることは少なく、個人所有がほとんどだったと考えられます。だから明るい色のクルマが多い。

170  でもさ、個人でこれ買える人ってどれくらいいたのかね。相当に高かったでしょ?

AKU そりゃもう高価なんてもんじゃないでしょうね。今のマイバッハ、あるいはそれより上のSLRマクラーレンと同等の価値があったんじゃないですか。ロードスターだと7000万円超です。

170  ワケわかんないね、パワーウィンドーのないオレのクルマと同じ道を走る7000万円って。誰が乗ってたんだ?

AKU 主なマーケットは北米ですね。アメリカの成り金向けじゃないでしょうか。ヨーロッパでもアウトバーン超特急として購入した層はいるでしょうけれど、あっちは階級意識が強いから、この手の超高級車に興味本位で乗る人はほとんどいないんですよね。今はちょっと違うかもしれないけど、当時メルセデスを買っていた人なんて先祖代々お金持ちの家に限られるから、マーケットとしては意外と小さい。その点アメリカはそんなことお構いなしでしょ?だからこういうクルマがよく売れるんですよね。それに、これだけトルクがあるってのもアメリカ人好みだと思う。ついでにテールフィンの名残もありますし。

170  アメ車由来の羽ね。

AKU W108とW109の前にW111というモデルが、キャディラックあたりに影響を受けたと思われる、テールフィンをつけていました。いわゆるハネベンと呼ばれる世代で、メルセデスらしくないという理由で嫌う人も多いですが、いずれにせよ上得意様であるアメリカでウケることを考えていたのは間違いないでしょう。今で言うなら中国マーケットですかね。市場に力があり、そこからの要望があれば、決して無視はせず柔軟に対応する。メルセデスベンツって頑固なようで、意外とそういう面もあるんです。だからここまで来られたんだと思います。かつて300SLがガルウイングからロードスターに変更されたのも、アメリカの代理店からの要請で決まったことでしたからね。

次回(3/3)に続く……

現在コメントは受け付けていません。