三ツ星倶楽部 其之八 特別編 How to buy Mercedes-Benz Parts 3/3 信用できる筋から購入すべし!
2011年6月30日 – 12:00 | 0

構成/田村十七男・芥川貴之志 撮影/山田裕之

AKU さてやってまいりました。こちらはボッシュ社の車両診断機を備えた、指定サービス工場です。今回はこちらのエンジニアの方にも協力して頂いて、コピー部品の実態を暴いてみようと思います。
170 その診断機はコピーじゃないよね?
AKU 当たり前じゃないですかっ。失敬なっ!!
170 あ、ゴメン。もはや疑心暗鬼になっちゃって。この運転席に付いてる機械は何なの?
AKU これは送信機だそうです。室内にあるECUから信号を取り出し、Bluetoothでテスターに情報を送るんですね。
170 へぇ、すごいね。ハイテクだね。

AKU 今回テストするのは、エアマスセンサー。このパーツは、エンジンに取り込む空気量を計るもので、そのセンサーが出力した電圧に合わせてガスを噴射する量を調整するんですね。ということは、エアマスセンサーが狂えばエンジン回転が不安定になるわけです。
170 つまり、重要な部品であると。
AKU そういうこと。なのに意外とトラブルが多く、純正部品は値段も高いので、コピー部品が数多く出回っています。
170 いくらくらいするの?
AKU 車種によっても異なりますが、純正部品の定価が10万円をちょっと切るくらい。
170 結構するんだね。それがコピーだと?
AKU 1万円台からありますね。そこで用意したこの3種類。どれが本物かわかります?
170 もう、その質問は勘弁して。ってか、見た目じゃ全然わからないからさぁ。

AKU 本当にそうですよね。特に電子部品は判別がつきにくいんですよね。正解は、一番右がメルセデスベンツ純正部品、真ん中がBOSCH製の本物、左が偽物です。
170 ベンツ純正と、BOSCHの本物っていうのは何が違うの?
AKU 基本的には同じもので定価もだいたい同じですが、流通経路が違うので実売価格に差があります。メルセデスベンツ純正は基本的に定価販売ですが、BOSCHだと3割引、4割引は当たり前で、スピードジャパンの様なショップだと半額以下で売っている場合もあります。これがいわゆるOEM部品と呼ばれるものです。
170 偽物はさらにその半額というわけか。
AKU そういうこと。じゃ、とにかくテストしてみましょう。まずは現在車両に付いている本物を計測してみます。断続的にスロットルを吹かしてみると、エンジン回転の上昇と下降に合わせて山なりの曲線が描かれますよね。

170 ふむふむ。エア量もそれにシンクロしてるね。エア量が上がった直後にエンジンスピードも上がると。
AKU 次にコピー。同じようにスロットルを吹かすと……。
170 おや? 曲線にいびつなポイントが出てきたぞ!?
AKU エンジン音にしても、スロットルを吹かした瞬間にもたつくところがあるじゃないですか。センサーの感度が低いんでしょうね。これがコピー部品の実態です。

170 正体見破ったり、って感じ。たださ、テストでは激しくスロットルの開閉を行ってみたけれど、街中ではここまで荒い操作はしないよね。となると、もしコピー部品だと知らずにいたら、気づかないままだったりするんじゃない?
AKU エアマスセンサーに関して言えば、そういう可能性は十分にありますよね。女の人なんかが普通に街中で乗ってて、じわっとアクセルペダルを踏む限りでは、エンジンの不調は感じられないかもしれない。だけど怖いのは、粗悪部品の多くは寿命が短いことじゃないですかね。
170 と言うと?
AKU 最初はそれなりにまともに動作していたとしましょう。でも時間の経過とともに、段々おかしくなってくる。たいがいの人は、何かおかしいなと思っても、替えたばかりの部品は疑いませんよね。そうすると、どこに不調の原因があるのかわからなくなる。さらに正しく動作しない部品を付けたことで、ほかの部分に影響が出る場合もあります。Aの個所は新品部品に換えた。そしてBの個所にトラブルが起きた。するとたいがいの人は、Aの個所を疑いませんよね。Bの個所を調べ、あるいはCやDまでチェックし始める。こうなったら堂々巡りです。本当の原因はつかめない。
170 なるほどね。そりゃ厄介だよなあ。でもさ、どうやったらコピーを見破れるんだろ?普通はこうしてテスターでチェックなんて、出来ないじゃない。

AKU 見た目に関して言うと、例えばメルセデスに納入する部品にだけ刻まれる記号が、OEM部品には本来無いはずなのに、偽物にはあったり……。
170 すでにややこしい。
AKU そうなんです。よほどの部品知識がないと、本物かどうかなんて判断できない。プロでも両方並べて比較しないとわからないはずです。となると、信用できる筋以外からは部品を買わない、というのが恐らく唯一の手段なんですよね。
170 昔のクルマ屋さんは、よそで買ってきた部品の取り付けは受け付けてくれなかったよね。それは信用できないものに触れない職人の意地でもあったし、だからこそ信頼できた。けれど最近ではそういう商売ができないらしいね。ネットオークションがここまで浸透しちゃって、誰もが安いパーツを簡単に入手できるようになったから。

AKU そのネットオークションではコピー品が出回っている。実際、工場がお客さんの持ち込んだ部品を取り付けてみたら、まともに動作しなくて治らなかったり、寸法がおかしくてアライメントが取れなかったりして、お客さんとトラブルになるケースが頻繁に起きてるみたいです。
170 情報量が増えた分だけ、それを精査する能力がユーザーにも必要になってるんだよね。いずれにせよ自動車部品の世界でも粗悪な偽物やコピー品が多数存在しているわけで、メルセデスはその格好のターゲットになっている、ということかぁ。
AKU その事実を知り、どう対応するかは、個々の判断に委ねられています。とにかく信用できるルートを得るしかないですね。
170 オーナーのみなさん、くれぐれもご注意を!

今回はいつもと趣向を変えて、車ではなく部品に注目してみましたが、いかがでしたでしょうか?昔に比べてメルセデスベンツが身近になった分、部品市場で偽物や粗悪部品が蔓延っている実態が、おわかり頂けたかと思います。愛車と末永くカーライフを楽しむためには、部品選び、ひいてはショップ選びが、とても重要なのです。読者の皆様におかれましては、安さに釣られて粗悪品をつかまされぬよう、くれぐれもお気をつけ下さい。

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三ツ星倶楽部 其之七 W201 190E 2.5-16 EVOLUTION 3/3 神経質じゃないエボリューション
2011年4月29日 – 12:00 | 0
三ツ星倶楽部 其之七 W201 190E 2.5-16 EVOLUTION 3/3 神経質じゃないエボリューション

構成/田村十七男・芥川貴之志 撮影/山田裕之

170 散々話してきましたが、そろそろ乗っていいですか?
AKU 乗りましょうよ。あ、でもエボはMTですよ。しかも1速が左下のレーシングパターンですから気をつけて。
170 まかせてよ。オレってMT車しか所有してない男なのよ?
AKU エボリューションどころか化石みたいな人ですね……。
170 ほぉ、シートはほぼバケットなんだね。メルセデスなのに。乗り降りでいささか腰が引っかかるけど、それもエボなら許せるか。

AKU リアシートもサイドが立ってます。運転手だけでなく、同乗者も横Gに耐えられる設計ってことですね。
170 やっぱり運転席からの見晴らしがいいなあ。これぞメルセデスって感じ。フロントエンドの角がはっきり確認できるクルマって、最近は本当に少ないよね。スラントノーズって、オレは大嫌い。あんなのはクルマじゃない。
AKU やっぱり化石だ……。
170 反面、後方はでっかいウイングのせいで若干視認性が落ちるね。ま、でもそれもエボだから許す!

AKU そうそう、このクルマは油圧の車高調整システムが装備されてるんですよ。3段階の高さが選べます。
170 スゴ〜い。実はフロントスポイラーを縁石に引っかけるんじゃないかとヒヤヒヤしてたんだ。これは助かるね。やっぱり芸が細かいなぁ。てなわけで、走り出します。1速はけっこう左に寄ってるんだね。クラッチ、ミートします。ほわっ、予想以上に発進がイージー。見た目の印象からすると、もっと神経質かと思った。
AKU そこはメルセデスなんですよね。ホモロゲを取るためにつくったとは言え、あくまで公道を走るための設定になってますから。もっとも2.5-16のエンジン自体が、下からトルクがあるセッティングじゃないからっていうのもあります。3000回転あたりでちょっと谷があって、それより上の回転域を使ってこそ本領を発揮するタイプじゃないですかね。そこらへんは昔のDOHCらしいというか。

170 街中ではそうそう上まで引っ張れないけれど、アイドリングで踏み込んでみると3500回転くらいからクィ〜ンと小気味よく回るのがよくわかる。サーキットで走ったらおもしろいかもね。ただ、ミッションはクロスレシオじゃないみたいだから、その点でユニットのレーシー感は乏しいかなあ。その分、乗りやすさは確保されているけどね。
AKU DTM用のマシンはそこんとこ変更してたんでしょうけれど、確かにミッションはちょっと惜しいかも。
170 しかしこの企画では毎回驚くポイントなんだけど、さすがに車体はしっかりしてるねぇ。
AKU この89年型エボⅠで13万キロ走ってます。なのに、この剛性感。キワモノっぽいモデルだけど、それでも長く乗れるところにメルセデスの素晴らしさがあるんじゃないでしょうか。パーツにしても、エボ専用部品はともかく機関系は素の2.5-16と共通なので、だいたい手に入ります。

170 さすがに22年落ちだから、細部を気にし始めたらお金がかかるかもしれないけれど、このコンディションには頭が下がるなあ。しかも正規輸入3台中の1台でしょ。そそるよねぇ。いくらだっけ?
AKU 撮影時のGUN AUTO様ご提供価格は288万円です。
170 安くない?
AKU 新車時は1000万円越えだったわけですからね。走りだけを楽しみたいなら他の選択肢もありますが、この佇まいや希少性は他にないし。中身を考えたら、お買い得な気がします。
170 よりレーサーっぽいエボⅡじゃないところもいいよね。
AKU 通な感じですよね、エボⅠのほうが。ちなみに正規輸入車は純正エアコンが付いてるんですが、並行車のエボIはほとんどが後付けクーラーなので、調子が悪いし壊れると部品がなくて治せないんですって。なので、もしエボⅠを買うなら正規輸入車がおススメです。
170 って、3台しかないんでしょ?

程度は超極上と言える今回の取材車両。目を凝らしてよく見れば、所々タッチアップがあったり、内装パーツが色あせてたりしますが、22年落ちということを考えれば、これは堂々の三ツ星ということにしたいと思います。塗り替えたり張り替えたりしてキレイにしたのではなく、フルオリジナルのままでキレイというのは評価に値するでしょう。そもそも3台しか正規輸入されていないうちの1台という希少性。ずっと高値を保っていたものの、このところの不景気のせいでグッと現実的な値段になってきたエボですから、気になる方はイッておかないと後悔するかも?!販売しているグンオートトレードさんはW201に特に強いお店で、オーナー自らエボIIなど複数の190Eを所有するマニアですから、アフターサービスも安心です。

1989y Mercedes-Benz
W201 190E 2.5-16 EVOLUTION

問い合わせ先
(有)グンオートトレード
埼玉県所沢市新郷170番地1
(04)2944-9970
http://www.gun-auto-trade.jp/

三ツ星倶楽部 其之七 W201 190E 2.5-16 EVOLUTION 2/3 エボ投入は遠大なシナリオの1ページ?
2011年4月22日 – 12:00 | 0
三ツ星倶楽部 其之七 W201 190E 2.5-16 EVOLUTION 2/3 エボ投入は遠大なシナリオの1ページ?

構成/田村十七男・芥川貴之志 撮影/山田裕之

170 というわけで前回の次回になったので、もったいつけずに話の続きを。
AKU 何でしたっけ?
170 エボリューションモデルをめぐる、W201に秘められたメルセデスの新たな戦略でしょ。オレは司会者かっつぅの。
AKU そうでした。メルセデスベンツが、そもそもなぜW201を登場させたかというと、ユーザーの若返りを図りたかったんですね。若返りとはつまり、ユーザー層を広げてもっと売りたかったということ。それまでのメルセデスベンツのオーナーというのは、50代以上の富裕層がほとんどでした。でも高級車市場の競争も激しくなってきたから、そのままではジリ貧になってしまう。そこで、コンパクトクラスと呼ばれていたW123よりも、さらに小さいモデルを投入することにしたんです。それがW201。その後継であるW202からは、Cクラスと呼ばれるようになるクラスですが、当時は190クラスと呼ばれていました。

170 小ベンツなんて言われてたよね。BMWの3シリーズは六本木のカローラだった。今じゃ小さいメルセデスも市民権を得た感じだけど、時はバブルでした。懐かしいなあ。
AKU 190Eは2.0と2.3なら5ナンバーだったんですよ。当時はベンツで5ナンバーなんてありえない!って感じだったから、まるで庶民のベンツみたいな捉えられ方をしちゃったけれど、かと言ってW201が廉価版的なつくりだったかと言うと、そうではなかったんです。車体のキャパシティは異常に高かった。なにしろ開発コストをふんだんにかけて、どのモデルよりも早くマルチリンクサスペンションをリアに投入しましたからね。ボディ剛性だって驚くほどのレベルですよ。そこへいくと当時のBMW3シリーズであるE30なんかは、ロールケージ組んでストラット入れてやっとサーキットを走れるって感じ。W201はそのままでもイケちゃいますからね。
170 語るねぇ。ってか肩入れしてんねぇ。
AKU いえ別に肩入れしてるわけじゃないんですけど……。新車だった当時はW201もE30も、ちょっと乗せてもらうくらいの経験しかなかったので、違いはよくわからなかったけど、中古車になってもったいなくなくなると、思い切って走らせられるじゃないですか。そうするとよくわかる。W201は本当にしっかりつくってあるんです。だからその分重かったし、高額でしたけど。

170 いくらだっけ?
AKU 2.0Lの190Eでさえ輸入された当初は500万円を越えてました。シリーズ最後のほうはギリギリ500万円を切ったんじゃないかな。でもメディアの評価は高かった。さすがメルセデス、小さくてもSクラスと同じ思想でつくるんだって。
170 うんうん。前に話したかもしれないけど、『NAVI』あたりでは大絶賛してたよね。マルチリンクは素晴らしい。日本車は当分追いつけないみたいな感じで。
AKU でも僕は、ちょっと違う見方をしてます。
170 ほう。と言うと?
AKU 確かに190Eは上のクラスと同じ思想でつくられているけれど、それはただ単に安いクルマのつくり方を知らなかっただけなんじゃないかと。本当はメルセデスらしいクオリティを保ちながらも、適度にコストダウンはしたかったはずなんですよ。若い人に売りたかったわけだから。

170 それ、鋭いかも。日本を勉強するときに同業のトヨタや日産じゃなく、吉野家とか調べればよかったんだね、きっと。
AKU はあ?牛丼となんの関係が?
170 いや、だって安いじゃん。
AKU そりゃまぁそうですけど、当時はレクサスやインフィンティも無くて、トヨタも日産も安いクルマが主流だったわけですよ。でもそれらのクルマさえ参考にはしてなかったと思いますよ、メルセデスは。
170 あ、そうなのか。
AKU で、結果的に上のクラスと同じロジックで新型車をつくったら、高剛性ボディとマルチリンクになっちゃった。
170 健気だなあ、メルセデス。作ってるものは違っても、安いクルマを大量につくる日本人の生真面目さと、根っこは同じなのかもしれないね。

AKU そして、2.5-16エボリューションが投入されました。これもW201のシナリオとして用意されていたと思うんですよ。メルセデスの看板でレースはできないけれど、若者層を中心に人気のあるDTMで勝てば必ずセールスに結び付くと、そういう計算があったはずです。
170 なるほどねぇ。確かに若い人に売るならレースに出るのは効果的なんだろうな。
AKU W201の空気抵抗係数って、どれくらいか想像できます?
170 Cd値ってやつでしょ?
AKU そうそう。それが0.32なんですよ。あの真四角な顔でありながら、クラス最高レベルの性能だった。そういう設計だったんです、W201ってクルマは。
170 で、念願の若返りは図れたの?
AKU 多少は若返ったと思いますよ。本格的に若返るのは次のCクラスからになりますが、Cクラス登場以前のメルセデスユーザーの平均年齢層は、40代後半だったそうです。190Eが登場する以前は、もっと高かったでしょう。いずれにせよメルセデスは、長い時間をかけてゆっくりと若返ってきてるブランドだと言えます。
170 なるほどな。でもそういった長い年月を経て若返ることが、メルセデスベンツがブランド力を失わないための計画の一部で、あらかじめ描かれた遠大なシナリオなのだとしたら、すごいことだよね。
AKU うーん、そこまで考えてやっているという可能性も、なくはないですよね。だからこその最強ブランドなのかも。
次回(3/3)に続く……

三ツ星倶楽部 其之七 W201 190E 2.5-16 EVOLUTION 1/3 正規輸入3台中の1台!?
2011年4月12日 – 12:00 | 0
三ツ星倶楽部 其之七 W201 190E 2.5-16 EVOLUTION 1/3 正規輸入3台中の1台!?

構成/田村十七男・芥川貴之志 撮影/山田裕之

AKU いやぁ、それにしてもすごい地震でした。まさかこの取材当日に震災が来るとは。撮影は一通り終わった後だったので、事故など起きなかったのは不幸中の幸いでしたが、犠牲となった方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された地域の復興をお祈りします。
170 ほんとにね。まさかあんな大事になっていたとは。震災後は集中出来なくて、原稿もなかなか書けなかったよ。被災地の皆さんは大変だと思うけど、本当にがんばってほしい。応援してます。
AKU さてさて、今回は170さん世代なら確実にアガるモデルを用意しました。190E 2.5-16 EVOLUTION。通称エボIですよ、エボI。
170 むむむぅ、悔しいけど、この羽はクるねぇ。ググッとねぇ〜。
AKU しかも、日本に正規輸入されたディーラー車の3台中の1台です。ウワサでは、そのうちの2台しか実際に道路を走っていないらしいですよ。

170 そうなの?超希少車じゃん。お宝じゃん。って、そういうトピックに前後不覚に飛びつくのも世代だよなあ。ま、いっか。そう言えばエボⅡってのもあったよね。
AKU 2.5-16エボリューションⅠが1989年で、エボリューションⅡが1990年ですね。いずれもドイツ国内レースのDTM参戦を目的に、ホモロゲーションを取得するため500台ずつ生産したんです。エボⅠは日本への正規輸入が3台でしたけれど、エボⅡになると50台も入れてるんですよね。
170 なんでエボⅠは少なかったんだろ?
AKU こんな特殊なモデルが売れるとは、ディーラーも思わなかったんじゃないですか? 実際には並行車が結構な台数入ってきて話題を呼んだから、エボⅡは多く入ったみたいです。エボⅡのほうがフェンダーもウィングもデカくて迫力があったし。

170 でも、こうしてエボⅠを目の当たりにすると、これはこれでなかなかパンチがあるよ。当時を思い出しても、あのメルセデスがこんなレーシングマシンみたいなクルマをつくった、みたいな強烈なインパクトがあったもんね。エボリューションという特別仕様的名称もここから流行ったんじゃない? ランエボとか。あれ、どっちが先?
AKU 勘弁してくださいよ。メルセデスが先に決まってるじゃないですか。ランエボは1992年からです。あれはWRCのホモロゲ用につくられたんですよね。
170 で、今も売ってるんだ。魂を引き継いでる三菱は、エラい!
AKU そうかなあ?ただのパクリって話もありますが……。そういえばギャランのAMGなんてのもありましたね。業務提携していたくらいだから、DNA的には似たところがあるのかも。
170 名前がややこしいけど、2.5-16ってのは2.5リッターのDOHC16バルブという解釈で間違いないよね。
AKU 正解です。エボリューションモデルじゃない素の2.5-16というモデルもあって、これはエボより35ps小さい200psでした。このW201はバリエーションが多岐に渡るシリーズで、190Eも190と言いつつ実は2リッターエンジンだったり、すぐに190E 2.3-16が発売されたりしたんです。ディーゼルもあったし、直6SOHCの2.6もあった。ちなみにエボリューションも含め16バルブのエンジンヘッドは、あのコスワースが作ったんですよ。

170 おおっ、コスワースと言えば、かつてF1専用の名機と呼ばれたDFVエンジンで名を馳せた、世界屈指のチューナーじゃないか。歳がバレるネタだけど。
AKU もうバレてますから。
170 けど、なぜコスワースだったんだろ? メルセデスならAMGがあるのにね。
AKU エボの場合、車体や足回りはAMGの手が入っているんですけどね。チューニングを関連メーカー以外に発注するのは、やはり過去に例がなかったみたいで、それだけ本気だったんだと思います。本気でDTMのチャンピオンを獲りにいったと。
170 DTMであれ他国のレースであれ、メルセデスは1950年代のル・マンでの事故以来レース活動を自粛すると言って、ワークス活動をしていなかった時期だよね?
AKU そうです。それでも競技のフィールドでメルセデスのイメージを植え付けておきたかったから、レースはAMGが請け負っていた。エボリューションモデルにしても、DTM参戦はAMG名義でした。

170 なぜエボⅠをつくってまでレースをやりたかったんだろ?
AKU それはですねぇ、メルセデスの新たな戦略があったからなんです。エボリューションモデルというよりはW201の、と言ったほうが正しいですが。
170 どんな戦略?
AKU それはですねぇ……。
170 うわっ、次回に引っ張るんだ!?
次回(2/3)に続く……

三ツ星倶楽部 其之五 W107 500SL 特別編 3/3 インテリア編
2010年7月31日 – 00:00 | 0
三ツ星倶楽部 其之五 W107 500SL 特別編 3/3 インテリア編

構成・撮影/芥川貴之志 撮影/山田裕之

さて今回は室内のお話です。インテリアと言ってもいわゆる内装部品のことだけではなく、クーラーなどの快適装備も重要な要素ですので、それらにも軽く触れてみたいと思います。クルマを運転している間は、ずっと室内にいるわけですから、インテリアが整っているかどうかって、満足度をはかる大切な要素ですよね。
痛んだシートはどう治す?

この時代のメルセデスベンツの内装は、欧州車の中ではかなり丈夫な方で、傷みにくいと言えるでしょう。どこかの国のメーカーのように、天井が垂れ下がってきたり、ドアの内張がベロンとめくれたりというトラブルはほとんどありません。しかしシートだけは、どうしても負担がかかる場所だけに、古くなってくるとヤレが目立ってしまいます。これは仕方のないところ。
表皮の傷みに関しては、素材によって直し方が異なりますが、革シートであれば最近は良いリペア業者さんがいて、表面の傷を埋めたりうまく塗装して仕上げてくれるようです。また傷がそれほど深くないようであれば、「染めQ」という名前で売られている補修用塗料などを使って、個人でもきれいに補修することが可能だと思います。傷みがあまりにもひどい場合は張り替えということになりますが、純正のシートカバーは高価な上に納期に時間がかかります。また黒、青以外の色は供給が終わっている可能性が高いので、シート張り替えの専門業者さんに作業を依頼した方が、早く安く仕上がるでしょう。ただしシートの張り替えは技術の差が大きく出ますから、施工業者の選択は慎重に。
ファブリック(布)シートの場合も内装専門の補修屋さんであれば、破れたり摩耗した部分をもとの生地とうまく色合わせして、補修出来るようです。しかし非常に手間のかかる作業であるため、面積が大きいと費用もかなりかかってしまいますので、補修するよりも革シートに一式張り替えをする方が多いように思います。
また一見革シートに見えて、実は合成皮革のMBテックスという素材を使ったシートもあります。MBテックスのシートはディーラー車ではあまり見ませんが、並行輸入車ですと珍しくありませんし、またディーラー車であってもドアパネルの表皮にはこの素材を使っています。MBテックスは大変丈夫な素材なため、傷や破れが生じることは稀ですが、もし補修が必要であれば革シートの補修と同じ作業をすることになります。
そして次にシート内部に関してですが、W107特有の症状として座面の歪みがあります。シートベースのスプリングが独特の形状のため、ヘタリが出やすいのです。この傾向は特に’86年以降の後期型に顕著に見られ、気になっているオーナーの方も多いのではないでしょうか。特に運転席側の座面が、ドア側に傾いてしまっているクルマが多いようです。

上の写真はモデルイヤー’86のSLのシートベースです。’85以前も基本的な構造は変わりませんが、材質等が微妙に変更されているのでしょうか、部品番号も違いますし定価ベースで見ると初期型の方が高価です。これがコストダウンのせいなのかどうかは確証がありませんが、後期型の方がシートがヤレていることが多いのは事実であり、その理由の一つがシートベースの作りの違いにあることは、どうやら間違いなさそうです。
そのシートベースですが、実は左右同じ部品番号、つまり同一部品なんです。そこで、もし座面の傾きが気になるようでしたら、まず左右のシートベースを入れ替えてみることをオススメします。まずはそれで気にならなくなると思いますし、そこからまた傾きが生じるまでは、かなりの時間がかかるはずです。もちろんシートベースを購入して交換するのが最善ですが、部品代はかなり高額ですから、こんなお手軽な修理方もアリなんじゃないでしょうか。

またシートベースを入れ替える際には、出来ればホースヘアパッドと呼ばれる内部のパッドと、その表面を覆う麻布を交換して下さい。このパッドはヤシの実の殻の繊維で出来ており、湿気を逃がして座り心地も良くする効果がありますが、劣化すると潰れてきてしまいます。麻布の状態も座り心地に大きく影響しますので、張り替えの効果は大きいと言えるでしょう。これらの作業は素人にはちょっと難しいですが、自動車内装専門の工場であれば、どこでも出来る作業です。
W107のダッシュボードって高いんです

’70年代〜’90年代初頭の古いメルセデスで、悩みの一つと言えるのがダッシュボードです。紫外線の影響で、どうしても表面素材が劣化してひび割れてしまうんですね。黒いダッシュボードは比較的丈夫ということが言えますが、青やグレーなどは早期に劣化が目立ち始めます。
通常ダッシュボードが傷んだ場合は丸ごと交換、となるわけですが、問題はその価格。現在W107のダッシュボードの国内定価は約35万円で、今後さらに値上げされる可能性が高い上に、生産そのものは終了しているため、メーカー在庫が終了してしまえばそれまで。となれば、ダッシュボード交換以外の解決方法を探った方が吉と言えそうです。
痛んだダッシュボードを目立たなくする、もっとも手っ取り早い方法は、スピードジャパンから発売されている「EZ COVER」でダッシュボードを覆ってしまうこと。このカバーは目の細かい上質なベロアカーペットで作られていて、見た目の上品さを損わずに痛んだ部分を隠し、ドレスアップ効果も発揮してくれます。同様のマットはアメリカでは定番のアクセサリーで、特に陽射しの強いカリフォルニアでは新旧問わず、多くのクルマがこういったマットをダッシュボードに敷いているのを見かけます。ですからまだダッシュボードが割れたりしていないというクルマでも、ドレスアップを兼ねて予防的に使ってみても良いのではないでしょうか。特に露天保管の車両はダッシュボードの日焼けに要注意です。
また別の方法としては、ダッシュボード補修用のキャップをかぶせて接着するという方法があります。一旦ダッシュボードを外して上手に装着すれば、新品のダッシュボードに交換したのと変わらないくらいの効果を発揮しますが、国内ではあまりこういったパーツが出回っていないのと、そういった作業に長けた業者さんを探すのがなかなか困難という問題があります。’70年代後半以降に発売された車種に比べ、W107はダッシュボードの脱着が極めて大変な車種でもありますので、不慣れな作業者に任せてしまうとトラブルの元になる危険性があります。
ウッドパネルは交換より補修?!

’70年代後半以降採用されたウッドパネルのヒビ割れや退色も、W107にはよくある症状です。予算が許すなら丸ごと新品に交換、がもちろんベストなのですが、W107の場合は製造期間が長かったこともあって、多種多様なウッドパネルが存在しました。もちろん品番が特定出来れば同じウッドパネルが届く可能性が高いわけですが、実際にはもっともポピュラーなタイプに品番が集約されていて、どのパネルでも新品が手に入るというわけではないのです。異なるタイプのウッドパネルであっても、穴が足りなければ開口し、穴が多ければ専用のパネルで塞げば使用可能ということで、メーカーとしては見た目までフォローすることは出来ないというスタンスなのです。
またW107の場合は一枚の大きな木板から実際に部品を切り出しており、車両出荷時はぴったり色が合っていますが、その中の一点だけを他のパネルに替えてしまうと、そこだけ色が合わないといったことも起こりがち。天然木を使ったパネルだけに、そこら辺はシビアだと言えるでしょう。
以上のような理由から、ウッドパネルのに関しては出来るだけオリジナルを使用し、どうしても見映えが悪いという問題があれば、そのパネルだけ専門の業者に依頼してリペアしてもらうのが、もっともリスクが低くコスト的にも有利なのではないかと思います。どの業者が安くて上手いか、といったことに関してはは情報が無いのでご紹介出来ませんが、最近は多くの業者さんが存在するようですので、サンプルなど見比べて判断されると良いでしょう。
もしどうしてもパネルを新品で購入して交換したい、という場合は、現物そのものや写真を用意して注文されることをオススメします。その場合でも、必ず同じパネルが手に入るという確証はありませんので、御注意を。
エアコンはガス漏れと電子部品が鬼門

古いクルマのエアコントラブルの代表格と言えば、やはりガス漏れ。それはW107も例外ではありません。しかし幸いなことに、室内に冷気を出すエバポレーターは比較的丈夫で、この部分からのガス漏れはほとんど無いようです。エバポレーターが要交換となると、ダッシュボードの脱着など作業が大変になりますので、この点は良いところ。じゃあどこから漏れるのか?と言うと、エンジンルーム内のホースが一番痛みやすいようです。これは足回りのゴムブッシュが痛みやすいのと同じ理由で、恐らくエンジンルーム内の高温が原因。ホースにオイル滲みが見られる場合は、交換なり修理なりをしましょう。エアコンの冷媒にはコンプレッサーの焼き付き防止のためにオイルが混ぜてあるため、ガスが漏れるとオイル滲みが見られるのです。
冷媒に関してはW107はR12、つまりフロンガスが基本です。レトロフィットと言って代替フロンであるR134aに仕様替えしている車両もあると思いますが、R134aはR12に比べて圧力が高くなるという特徴があるため、配管類がR12仕様のままでR134aを封入するとなると、十分な量の冷媒を注入することが出来ず、冷えが十分でなくなったり、また冷媒を入れすぎてガス漏れを誘発してしまうということもあり得ます。
最近ではR12と親和性のある代替フロンというのが出回っており、「Cold 12」という商品などはその代表格と言えますが、そういった代替フロンであればR12と変わらない冷却効率を得ることが出来ます。しかしそういったガスの使用は本来メーカーが想定していませんので、使用にあたっては何らかのリスクがあると考えた方が良いでしょう。Cold 12に関しては多くの車両の長期間運用の実績がありますが、それでも私のクルマではR134a用ホースとの相性問題と考えられるトラブルがありました。ですからいくら実績があると言っても、100%ではないということです。使用にあたってもあくまでも自己責任でお願いします。
ガス漏れ以外に多く見られるのは、コントロールパネルの故障とエアコンプレッサーリレーの故障です。これらは回路上の半田付けに問題があり、経年変化で接触不良が起きるのが原因の大半でしたが、生産終了から20年以上が経過し、コンデンサーの容量抜けといった問題も起きる頃です。これらの部品に関しては、今でもちゃんと供給がありますので、必要があれば交換という事になるでしょう。コントロールパネルはフルオートであるクライメートコントロールのパネルが新旧ともに壊れやすく、マニュアルのタイプは壊れにくいと言えます。
また動作には支障が無いけれど、ブロワーから笛の音のような音が聞こえて気になる、というケースも多いと思います。これはブロワーモーターのメタルの摩耗によるもの。本来はこのメタルを外してベアリングにでも交換出来れば良いのでしょうが、残念ながらこの部分は非分解式であるため、簡単には行きません。また油を差したとしても、もともとオイルレスベアリングで注油は不要なメタルであり、音の原因は摩耗ですから、根本的な修理にはなりません。というわけでブロワーモーターAssyの交換が必要となるわけですが、一つ救いなのは前モデルともにファンの付いたモーター本体部は共通であること。モーターに接続されている抵抗付きのハーネスは、エアコンの使用やハンドル位置に応じて多種類があり、その数だけモーターAssyの品番も存在するのですが、現在付いているハーネスに異常が無い場合は、モーター本体だけならどの品番のものでも流用が可能ですので、ディーラーに在庫が無い場合や部品取り車から調達したい場合には、分解してそこだけ流用するという手段もあります。とはいえ、それもまた作業する場合はあくまでも自己責任においてお願いします。
というわけでかなりはしょった説明にはなってしまいましたが、W107に関するメンテナンスのポイントをまとめてみました。後日加筆修正することもありますし、もし是非取り上げて欲しいという内容がありましたら、リクエストをお願いします。可能な限り調べて対応したいと思います。

三ツ星倶楽部 其之五 W107 500SL 特別編 2/3 機関編
2010年7月24日 – 00:00 | 0
三ツ星倶楽部 其之五 W107 500SL 特別編 2/3 機関編

構成・撮影/芥川貴之志

何だかんだ言ってもやっぱり一番重要なのがエンジン、サスペンションといった走りに関する部分。すべてを細かく掘り下げていくと、本が一冊書けちゃうくらいになりますので、本当に軽く触れるだけになってしまいますが、ポイントを絞ってご紹介しておきましょう。
エンジンで一番重要なのは燃圧。

18年も生産されていたW107ですので、初期と後期ではかなりシステムが変わっているのですが、1976年〜1989年の間はK&KEジェトロ(※正式にはジェトロニック)という機械式のインジェクションシステムが採用されていました。現在生き残っているW107はほとんどがこの年式の車両ですので、ここではそれ以前のDジェトロについては割愛させて頂きますのでご了承を。
で、その機械式インジェクションですが、まずは基本であるKジェトロ(モデルイヤー1976〜1985のW107に採用)のシステム図をご覧下さい。

いきなりこんな図を見せられても、何のことかわからないかもしれませんが、まず燃料タンクから順に燃料がどんな風に流れるか見て下さい。Kジェトロの場合、まずイグニッションSWをオンにすると燃料ポンプが作動し、ライン全体に4.5〜5.3kg/cm2の圧力がかかります。そしてエンジンを始動した後は、アクセルコントロールで吸気量が増えると、エアフローメーターによってフューエルディストリビューター(以下フューエルデスビ)内のコントロールプランジャーが動かされ、燃料の流量が調整されます。ちょっと難しいかもしれませんが、イメージとしては水道の蛇口に近いと考えて下さい。水道も配管内では一定の圧力がかかっており、流量は蛇口をひねる量で調整しますね?Kジェトロの場合は、まさに燃料の蛇口が付いているようなもので、チョロチョロからドバドバまでの調整をフューエルデスビ内で行っています。
実は国産車や最近のメルセデスなど、多くの自動車に装備されているインジェクターは、これとは違ったシステムを持っています。それはDジェトロというタイプとその進化系で、俗に電子式と呼ばれているタイプです。電子式の場合はパルス制御によって燃料噴射が行われるのですが、インジェクターノズル自体が燃料を送り出す動作をするため、燃料ライン内の圧力はさほど重要ではありません。ところがKジェトロの場合、燃料ポンプによって作り出された圧力がそのままノズルから噴射する力になるため、ライン圧が落ちると噴射量も減るという結果になってしまいます。家の蛇口も、風呂場でシャワーを使ったりすると水圧が落ちて、いくら蛇口を開けても水が出なくなりますよね?それと同じ現象が起きてしまうのです。
この電子式と機械式の構造的な違いは、多くのメカニックがはまる落とし穴だと思います。整備のコツと言いますか、調子を崩す原因となるポイントが違うのです。Kジェトロを搭載したエンジンの場合、もちろん点火系の異常などにも注意を払わなければいけませんが、一番のポイントはライン圧です。ライン圧が正常でなければ、いくら他を調整しても無駄です。よくライン圧が下がってしまったクルマで、フューエルデスビの調整ビスを回して燃料を濃く調整して誤魔化しているケースを見かけますが、これでは流量は増えても圧力が上がらないため、一見調子が良くなったように見えても、燃料がシリンダー内で正常に気化されず、すぐに調子を崩します。これは本当に多く見られるミスで、ヤナセなどのディーラーでも普通にやっていますので、注意が必要です。
ではどうすれば燃圧が正常になるかと言うと、まずは燃料ポンプリレーと燃料ポンプ本体です。これらが劣化して吐出量が減ることで、圧力が下がることが原因としては一番多いようです。よくポンプから音が出たら交換、なんて言われますが、実際音は関係無いと思います。音が出てても吐出量に変化がなければ問題無いわけですから。そしてフューエルアキュームレーターやフィルター、インジェクターノズルといった部品も、劣化した燃料やカスが堆積して通路を塞ぎ、流れを悪くするケースが多々見られます。ですから古いクルマでこれらを交換した形跡が無い場合は、一度まるごと一式交換してやることで、燃料システムを初期化することが出来ます。そうして正常な燃圧にしてやらないと、調整作業もすることが出来ないわけで、交換するべきものを交換せず調整だけで何とかしようと思っても、結局治らないままになってしまいます。
ではKEジェトロの方も見てみましょう。

こちらがKEジェトロのシステム図です。Kジェトロとの一番の違いは、エレクトロニックコントロールユニット(ECU)による制御が積極的に行われるようになっているところです。フューエルデスビには差圧レギュレーターという部品が追加され、この部品に電気信号を送ることで、フューエルデスビ内の燃圧を任意に変化させることが出来るようになっています。つまり気温や水温、排気ガスの濃度をECUが見て、それに応じた適切な噴射量に調整する機能を持っているのです。
KEジェトロが生まれた背景には、性能向上というよりも環境対策という側面がありました。よりクリーンに、より低燃費にするため、こういった機能が必需となったわけです。ですからKEジェトロを搭載した車両でも、ヨーロッパ仕様の500SLなど、マフラーの触媒やブローバイシステムを備えていない個体だと、O2センサーも取り付けられておらず、KEジェトロを搭載していてもECUは排ガスを見ていない場合もあります。
KEジェトロの場合、ポイントはフューエルデスビの前後でライン圧が変わることです。ですから燃料ポンプ等を交換してフューエルデスビ以前のライン圧が正常になったとしても、O2センサーが変なフィードバックをしたり、差圧レギュレーターが壊れてしまうと、フューエルデスビ以後のライン圧が崩れて不調になってしまうのです。ですから問題の部分がどこにあるのか、を探るのが少々困難となりますが、基本的な構造はKジェトロと一緒ですので、やはりライン圧が重要というのは変わりません。
点火系や内燃機に関する説明は次の機会に譲りますが、基本的なところは古めのメルセデス全てに共通します。プラグコードがリークしていないか、デスビキャップ&ローターが摩耗していないかなどのチェックは、当然必須です。また丈夫なエンジンですのでそう簡単に壊れることはありませんが、オイルは鉱物油ベースが良いでしょう。化学合成油は樹脂やゴムの部品を痛めます。稀にチェーンガイドが破損してタイミングチェーンが切れた、なんてトラブルもあるようですが、そういったケースも鉱物油だけを使っていれば防げたのではないのかな?と個人的には思います。もちろん確証があるわけではありませんが、自分の経験上では古いメルセデスに化学合成油の組み合わせは、リスクが高いと判断します。
フロントの足回りは要注意。

本編でも説明した通り、W107のフロント足回りはいわゆる縦目コンパクトと呼ばれるW114&115がベースになっています。リアはW116に近いもので、特に問題はないといいますか、トラブルは少ないのですが、問題はフロント。華奢な(?)サブフレームに重いエンジンを載せ、エンジンルームも狭く設定してしまったものだから、さあ大変。サブフレームに亀裂が入るわ、ゴム部品がすぐイっちゃうわで、注意深く点検する必要があるのです。
ちなみに問題のサブフレームに関しては、下記の車体番号がリコールになっています。しかし、実際には’80年代前半の車両(500SL、500SLC等)でも同様のケースが見られるので、注意が必要です。

型式

通称名

車体番号

107023

350SLC

WDB107023-12-000001~013925

107043

350SL

WDB107043-12-000001~015304

107024

450SLC

WDB107024-12-000001~013547

107044

450SL

WDB107044-12-000001~030992

C-107024

450SLC

WDB107024-12-013548~032223

C-107044

450SL

WDB107044-12-030993~066298

熱害によるゴム部品の劣化はかなり多く見られるケースで、サブフレームマウントやエンジンマウント、サスアームマウント、タイロッドブーツ、各種ホースなどは、定期的にチェックした方が良いでしょう。しかしこれら全てを交換するとなると、かなり金額的にもかかってしまうため、手を入れられないままになっている車両を、中古車市場では多く見かけます。現状大丈夫だとしても、乗り始めるとすぐにダメになる、というケースも多いので、これからW107を買おうという人は、フロント周りの総体的なリフレッシュも、車両購入計画の一部に入れた方が良いのではないでしょうか。

フロント周りの重い部品一式を支えているサブフレームマウントは、特に劣化しやすい部品です。車高や走りの安定性、乗り心地にも影響しますので、交換した形跡が無ければ一度交換してみることをオススメします。ただし社外部品の中にはセンターが合っておらず、クルマがまっすぐ走らなくなるような物があるそうなので、御注意を。純正部品か、OEM供給しているFebiビルシュタイン、レムフォーダーあたりがオススメです。
またステアリング系統も、W107の場合は重いエンジンを搭載したことで、痛みやすくなっています。ステアリングギアボックス本体やギアボックスとコラムを繋ぐジョイント部にガタが出ていたり、タイロッドにガタが出ている場合が多いので、こちらも定期的な点検と交換が必要と言えるでしょう。
これらの部品は並行輸入部品などを使うことで、経費や安く抑えることが出来ますが、エクステリア編でも触れた通り、アメリカ等で出回っている部品は粗悪品や偽物が多いようです。安いからと言って飛びついてしまうと、正常にアライメントが出せなかったり、すぐにまた交換が必要になったりという結果になりますから御注意を。実は筆者自身もそういった経験がありますので、少し紹介しておきましょう。

この写真を撮影した日付は、2002年8月27日です。今も乗っている500SLのタイロッドが痛んでいたので、自分で交換をしました。左の古いタイロッドのブーツから、グリスが漏れているのがわかるでしょうか?
この時はアメリカからパーツを取り寄せました。MEYLE(マイレ)というメーカーのもので、OEMメーカーでは無さそうでしたが、とにかく値段が安かったので、まぁたいして変わらんだろうと考えて購入したのです。ところが片側のタイロッドのエンド部のネジがロックしていて、回らないのです。これではアライメント調整が出来ませんので、さあどうしようと考えた結果、まだブーツの破れていない純正のタイロッドと組み合わせて使うことにしました。幸いガタも無かったし、ネジの規格も一緒でしたので、恐らく15年間無交換だったオリジナルタイロッドと、マイレのタイロッドエンドを組み合わせたのです。
それから7年後、2009年のことです。いつもお世話になっている工場に、エンジンマウントとサブフレームマウントの交換をお願いしたのです。預けてから数日後、電話がかかってきました。「タイロッドがダメですね〜。ブーツ割れてますよ。」とのこと。すぐにスピードジャパンからタイロッドを工場に送ってもらい、数日後に作業は完了。受け取りの際に外した部品を見せてもらって驚きました。破れていたのは、交換した新しい方の部品だったのです。

こちらが7年後の姿。右は7年前に新品で購入し、取り付けたマイレのタイロッド。左は22年前から無交換だった純正のタイロッドです。純正の方のブーツはまだ使えますが、マイレの方は完全にアウト。こんなブーツ全体がヒビ割れてしまうようなタイロッドエンドは、初めて見ました。

僕のクルマは4つのタイロッドエンドのうち、3つがマイレだったわけですが、そのすべてが同じようにヒビ割れていました。ですから偶然ではなく、クオリティがそういうレベルなのでしょう。対してレムフォーダーが生産したと思われる純正のタイロッドは、まだ使える状態なんです。ちなみに7年間の走行距離は約4万キロ。年数から言っても、距離数から言っても、この程度で寿命を迎えてしまう部品など、はっきり言って問題外です。そういった部品が広く流通していて、中には純正よりも質が良いなんてデタラメなことを言っている業者さんさえいるそうですから、まったく困ったものです。
実はワタクシ、これが発覚する前にもマイレで失敗をしています。W124に乗っていた時、ウォーターポンプから水漏れを起こしてしたので、マイレの安いポンプを購入して交換したんです。そしたらなんと、ポンプの鋳造に問題があって、新品なのに水が漏るじゃありませんか。
今では質の悪いウォーターポンプは水漏れするというのが、半ば常識化していますが、当時はそんな話は聞いたことがありませんでした。それ以来、品番違いも含めて個人輸入のリスクの大きさを強く実感して、部品はほとんど国内で買うようにしているのですが、いずれにせよ質の悪い部品に当たる確立の高いメーカーには、注意が必要です。スピードジャパンでも過去にそういった部品を出してしまったことはあるそうですが、工場やお客様からのフィードバックがあれば、すぐに検証して取扱いを止めたり、代替品を供給したりするようにしているとのことです。すべての業者さんにそういった対応をして頂ければ文句はありませんが、なかなかそうもいきませんね。皆様におかれましては、くれぐれもネットオークションで粗悪品を掴まされることなどないよう、お気をつけ下さいませ。
次回、インテリア編(3/3)に続く……

三ツ星倶楽部 其之五 W107 500SL 特別編 1/3 エクステリア編
2010年7月17日 – 00:00 | 0
三ツ星倶楽部 其之五 W107 500SL 特別編 1/3 エクステリア編

構成・撮影/芥川貴之志 撮影/山田裕之

さて、今回からは特別編と題しまして、W107のメンテナンスなどに関する話題をお届けしたいと思います。筆者自身、1997年から後期型の107/500SLを2台乗り継いでおりまして、様々なトラブルやメンテナンスを経験してきました。特に若かりし頃、最初の107を買ったばかりの頃は、ギリギリの予算で購入したこともあって、大変だったものです。修理の必要性は感じても見積りの高さに驚き、ヤナセに行けば門前払いに近い扱いを受け、なんとか自分で海外から部品を調達するすべを開拓して、試行錯誤しながら段々と自分自身でもメンテナンスをやるようになっていきました。そうした体験の中から、多くの107に共通するであろう、維持するためのポイントみたいなものを、かいつまんで紹介してみたいと思います。では初回はエクステリアに関する話題から。
まずはSLのアイデンティティたるソフトトップ!

のっけからSLCオーナーの皆様にはすいませんが、ソフトトップすなわち幌のオハナシ。やはり107は圧倒的にSLが多く、そしてまた幌に関しては多くの方が興味を持っているようです。
まず1つ言えることは、幌は消耗品だと言うこと。馬車の時代から幌車というものは、オープンで乗るのが正式なんですね。幌というのはあくまでもエマージェンシーとして使用するもの。SLにおいても、天気の悪い日や気候が適さない時期はハードトップを着用し、オープンで走行中に天候が崩れた際にだけソフトトップを緊急避難的に使用するというのが、本来のコンセプトなんです。
だから幌に関しては耐久性をそれほど考慮されていないし、痛んだら張り替えるというのが、これまた馬車の時代からの伝統でもあります。近年ではハードトップそのものが開閉するスタイルが主流となってしまい、こうした風情が失われていくのが個人的には残念と感じているのでありますが、ともあれ痛んだ幌はさっさと交換しちゃいましょう。
ソフトトップを交換する場合、幌骨ごとAssy交換する方法と、幌布だけ交換する方法があります。ヤナセなどに行って幌を交換してくださいと言うと、高い確立で骨ごと交換と言われるようですが、これは当然かなりのコストがかかります。やはり主流は幌布だけの交換でしょう。中には割れた窓だけを交換したい、という方もいらっしゃいますが、窓を交換する場合にも幌は脱着しないといけませんし、窓の脱着縫製工賃が別に必要な上、以前の縫製穴から雨漏りするケースが多いようです。幌布を安く入手出来る場合には、丸ごと交換した方があらゆる面で良いと言えます。
幌布だけを交換する場合、純正部品の幌布以外にも社外品を選ぶことが出来ます。現在多く流通しているものは、アメリカの会社が販売しているもので、「ステイファーストクロス」という素材を使用したものと、「ジャーマンクロス」という素材の2種類があります。
ステイファーストクロスは多くの米国車のソフトトップに採用されている素材で、メルセデスベンツ純正のものとはちょっと素材感や色味が異なりますが、大衆車向けに作られている素材ですから価格が安いのが最大の特徴です。ジャーマンクロスの方はその名の通りドイツ車の多くに採用されている素材で、メルセデスベンツ純正の幌もこの素材で作られていますから、見た目はまったく同じ。ただし窓の部分に入る刻印が、メルセデスのものではありません。
筆者のオススメとしてはやはり、社外品のジャーマンクロスを使った幌です。価格的にも純正品より大幅に安く手に入りますし、実際自分のクルマでも使用していますが、性能的にはまったく問題ナシ。ステイファーストクロスの幌を取り付けた107もたまに街で見かけますが、やはり生地が違うせいか少々違和感を感じます。
幌の交換はディーラー等に頼まなくても、専門の業者さんに直接持ち込んでお願いすることが出来ます。iタウンページなどで”幌 内装”などと入力して検索すれば、近くのお店を探すことも出来るでしょう。工賃はお店にもよりますが、5〜7万円といったところが相場のようです。
ちなみに張り替え技術の上手い、下手はもちろんあると思いますが、張り替え終わった自分のクルマの幌がシワシワだからと言って、落胆する必要はありません。張り替えたばかり幌はだいたい波打ってるものでして、そこに水をかけたり、雨が降ったりして、伸縮を繰り返すうちに段々と馴染んでくるんです。ですから、よほど下手な作業をされていない限り、まともに見れる状態に落ち着きます。シートの張り替え等に比べたら、作業者のスキルに左右されにくい作業と言えるのではないでしょうか。
曇ったメッキトリムは交換!

クロームメッキのパーツが多いのは、クラシックメルセデスたるW107の特徴の1つです。バンパーやグリル、エンブレムといったパーツのメッキは非常に堅牢なのですが、ウインドウトリムなどのメッキについては曇りが発生しやすく、白くなっているクルマを多く見かけます。
曇ったメッキは磨けばいい、と思われがちですが、この曇りは表面層と下の層の間に起きるようですので、曇りを除去出来るまで磨き込むのは大変な作業です。またそこまで磨き込んだ場合は、表面層が完全に削り取られた状態になっていますので、耐候性も低下してしまいます。
また再メッキを検討される方も多いようですが、W107のトリムは大変薄い素材なので、一度脱着すると波打ってしまう場合が多々あります。また再メッキ自体、丁寧な磨き作業が必要で工賃はかなり高いものとなりますので、バンパーなどの単価の高いパーツや、部品の供給が無い場合を除けば、部品そのものを買ってしまった方が安い場合が多いと思います。
ですからメッキトリムの曇りの改善に関しては、交換が基本と考えた方が良いでしょう。ディーラーで部品を取ると、点数が増えた場合には高額となるかもしれませんが、並行輸入部品であればかなり節約することが可能です。
ゴムパーツは純正に限る?

ウェザーストリップなど、エクステリアに使用されているゴムパーツは、絶対に純正部品を選びましょう。純正品と社外品を見比べてみると、硬さや形状がずいぶんと違うことがわかります。特にピラーレスドアを採用しているW107は、ドア周りに多くのゴムパーツを使用しており、ドア位置やウインドウ位置を細かく調整してフィッティングさせるようになっていますが、形状の違うゴムパーツを取り付けてしまうと、いくら調整しても絶対に合わなくなってしまいます。
特にSLの場合はソフトトップとハードトップの両方で調整をしなければなりませんので、ゴムパーツは純正部品に限ります。そして調整する場合はハードトップを基本にしましょう。ソフトトップの方は幌骨が動いてある程度調整してくれますので、最初は合わなくても段々と馴染んでくるようです。逆にソフトトップの現状を基本に調整してしまうと、ハードトップに交換した際にドアが閉まらなくなってしまう場合があるので要注意です。
W107が多く輸出されたアメリカでは、数多くの107用部品が流通しており、ウェザーストリップなども安価で買うことが出来ますが、これこそが粗悪な社外部品です。社外部品の危険性については他の項で改めて触れますが、ウェザーストリップに関しても注意が必要です。純正のゴムパーツに関しては、アメリカでもディーラーから仕入れるしかありませんので、安売りしている業者はほとんど存在しないのではないでしょうか。個人輸入などをされる際には、特に注意して頂きたいと思います。

W107の場合、Aピラーのウェザーストリップは大変凝った構造になっています。3種類のゴムパーツを接着した上で、水切りのための布を貼り合わせて作られているのですが、社外品を注文するとただの硬〜いゴムのカタマリがやってくるのです。最近のピラーレス車はドアの開閉時に窓が動いてフィッティングを調整しますが、W107の場合は繊細な調整が命。正しい部品を正しく使うことが、正確な調整をするためには重要なのです。

そして意外と忘れられがちなのが、この部品。はっきり言って紛失しているクルマが多いです。このゴム部品はドアの当たりをやわらげるためのものなのですが、構造に難があって壊れやすく、無くなりがちな部品です。W107をお持ちの方は、ちゃんとこれが付いているか、確認してみて下さい。
次回、機関編(2/3)に続く……

MB-Net TV Vol.2 500E 解体新書 2/2
2010年4月16日 – 00:00 | 0
MB-Net TV Vol.2 500E 解体新書 2/2

出演/武井寛史 制作/音速ムービーズ 協力/エスファクトリー・JDDA

第2回500E特集の後編では、前編から引き続き500Eのメンテナンスポイントの紹介と、さらにはマニアが作り上げた究極の500Eカスタムまで登場?!500Eがドラッグレースを走っちゃうんです。500Eファンなら見逃せないマニアックな世界を、レーシングドライバー武井寛史がレポートします。
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MB-Net TV Vol.2 500E 解体新書 1/2
2010年4月9日 – 00:00 | 0
MB-Net TV Vol.2 500E 解体新書 1/2

出演/武井寛史 ゲスト/中村孝仁 制作/音速ムービーズ 協力/エスファクトリー

MB-Net TV第2弾のテーマは、根強い人気を誇るW124の500E&E500です!ポルシェの技術者が開発段階から関わり、ポルシェの工場で一部生産が行われたという、メルセデスベンツの歴史に残る名車500E。その魅力を探るべく、レーシングドライバー武井寛史がレポートします。
前編ではかつてノバエンジニアリングでメカニックを勤めていたという、モータースポーツ業界の生き字引、中村孝仁氏が登場。500Eの生い立ちをジャーナリストの視点から語ってくれます。そして500Eオーナーとその予備軍なら誰でも気になる、メンテナンスポイントについて、エスファクトリーの柴田氏が解説します。
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三ツ星倶楽部 其之三 W204 C200 3/3 わざわざEクラスじゃなくてもいい!
2010年3月26日 – 00:00 | 0
三ツ星倶楽部 其之三 W204 C200 3/3 わざわざEクラスじゃなくてもいい!

構成/田村十七男・芥川貴之志 撮影/山田裕之

AKU 現行モデルに困惑するトナオさんの気持ちはわかりますが、それでも僕はこのCクラスを魅力的だと言いたいんです。それは、ジムにも共通するデザインのバランスの良さもありますが、中身のバランスもすごく良いな〜と。過去のメルセデスの素晴らしさを知っている人にこそ、W204に乗ってみてほしいと思うんです。
170 そこまで推す理由とは?
AKU 一番の理由はディメンジョンですね。ちょっとこの数字を見てください。

170 ここで扱った過去のモデルとの寸法比較?
AKU 実は最初にW204に乗った時、なんかW124に似てるなーと思ったんです。取り回しの感じとか、あと旋回しながらブレーキ踏んだ時の挙動とかが。で、これはもしかしてディメンジョンが似てるんじゃないかなと感じたので、家に戻って調べてみたらビンゴだった。いちばん下のW212は現行のE250CGIです。この数字ではっきりしているのは、昔のミディアムクラスは現在のEクラスよりも、Cクラスにサイズが近いということです。全長こそ差はありますが、これはオーバーハングを短くするトレンドだからでしょう。全幅ならW124よりW204のほうが広く、ホイールベースにしても比率的にはW204のほうが長い。
170 本当だ。Cクラスは今や20年前のEクラス並みに大きくなったと言っても過言じゃないんだね。
AKU そうなんです。日本のみならず、おそらく世界中の街中で乗るには最適だと思えた、かつてのミディアムサイズまで、今のCクラスは拡大した。そして現行のEクラスはさらに大きくなった。であれば、走りのバランスや使い勝手を重視して選ぶなら、現行Cクラスは最良の選択と言えるんじゃないかと。
170 おっ、数字で攻めてきた。説得力があるねぇ。
AKU もちろんこの大きさの変化は、安全基準の変化でもあるわけで、室内空間やトランクの広さについて言えば、W204はW124に比べてかなり狭くなります。ただW124には無かったトランクスルー機能もあったりするので、ユーティリティ的にはあまり変わらないんじゃないかな。
170 最近のクルマはピラーも寝てるしね。室内はどうしても狭くなる傾向にあるよね。

AKU あと装備の充実度も見逃せないんじゃないかと。ベーシックモデルのC200エレガンスでさえ、カーナビやオーディオが一括操作できるCOMANDシステムが標準装備されているんです。バックカメラも上位車種と同じのが付いてますし、フルオートエアコンだし、シートもリクライニングとかは電動ですから。これは今までのCクラスでは考えられなかった。
170 コンソールと一体デザインだからすっきりした印象でいいよね。
AKU 個人的にはカーナビやオーディオには、汎用性を持たせたほうがいいと思うところもありますけどね。カーナビをアップグレードしたいときはどうするんだろう、とか。それが無理なら、このクルマの賞味期限は5年程度かな?と勝手に推測しちゃうんですけれど。
170 それでもとにかく、ここまでの装備があれば十分だよね。
AKU トナオさんのディフェンダーなんて、ナビもETCも付いてないですもんね?
170 ほっといてよ。好きで乗ってるんだから。

AKU 190Eが登場したとき、あの小ささでSクラスと同じ造りこみをしたってことが、売りになったんですよ。でも、細部に目を向けていくと、ウッドパネルを使っていなかったり、シートが手動だったりして、現実的にはサイズの縮小じゃなく廉価版的な部分も少なくなかった。ベーシックモデルだと窓も手動開閉でしたからね。ところが現行のCクラスは、主要装備について言えばSクラスとほとんど変わらない。サイズは小さいけれど内容は上質という、実は190Eで達成できなかったことが実現されているんです。このクルマについて語るなら、そこは結構重要なんじゃないですかね。
170 総合的なバランスに長けていると、そこを推したいのね。
AKU 価格も手頃ですよ。サイズ的に大差ない81年の230Eは700~800万円したのに、現在のCクラスは500万円でお釣りがくるところからラインナップが始まるじゃないですか。まぁ絶対的には安いクルマとは言えないけど、コストパフォーマンスはかなり良くなってるんじゃないかなぁ。走行性能とか質感も以前のCクラスより格段に良くなってますからね。W124あたりのEクラスから新車に乗り換えたい人は、わざわざW212じゃなくてもいいじゃない?って、そう言いたいです。なんかディーラーの営業みたくなってますが(笑)

まー何しろ登録してから1年も経っていない現行モデルですから、状態を評価すること自体ナンセンスなわけですが、当たり前の三ツ星獲得と相成りました。ただこの状態がどれだけ維持出来るのか。W124などは古くなっても手を入れてやれば新車同然になりますが、現在のメルセデスにそういう資質があるかというと、少々疑問ではあります。とはいえ、ほんとよく出来ててお買い得なクルマですよ。賞味期限は短めだとしても、それがトレンドですから。一生乗り続けようという気概で購入してはいけません。そういうクルマはどこのメーカーを見渡しても、今はありませんから。スーパーセブンとコブラくらいかな?

2009y Mercedes-Benz W204 C200

三ツ星倶楽部 其之三 W204 C200 2/3 モビルスーツにたとえるなら、ジム!?
2010年3月18日 – 00:00 | 0
三ツ星倶楽部 其之三 W204 C200 2/3 モビルスーツにたとえるなら、ジム!?

構成/田村十七男・芥川貴之志 撮影/山田裕之

170 アクちゃんがベタ褒めするその7速ATに乗れないから、オレの話はさらに混迷するよ。この前、現行のBMW5シリーズに乗ったのね。見た瞬間、がっかりしたんだ。
AKU どこに失望したんですか?
170 見た目。つまりエクステリアデザイン。特に顔が。意見には個人差があるという前提で聞いてほしいけれど、ガキっぽいの。それはBMW本来のヤング・アット・ハートな領域を逸脱していた。ガンダムの世界だね。ほとんどモビルスーツだった。それも悪役のほう。
AKU ああ、なるほど。確かに最近のBMWはドムっぽいかもなぁ。テールランプなんてジオングの口に似てるような気も……。
170 なぜBMWがこんなことになったのか自動車に詳しいライターに聞いたら、メーカーの関心が中国マーケットに向いているからなんだって。中国人はガンダムみたいなエッジの利いたデザインが好きらしい。なにしろ今や中国は世界有数の市場になったから、そりゃ無視できないのもわかるけどね。それにしたってBMWの気概はどこに行ったんだと、少々さびしくなったわけ。

AKU ガンダム路線で言うなら、W204はジム(GM)っぽいな。
170 ジム? それってガンダムの仲間? いやさ、ガンダムを例に出しておいて実は詳しくないんだよね。ごめん……。
AKU 僕もガンヲタじゃないですから、一年戦争しかわかりませんよ。
170 ?????
AKU えー……ですからその、ジムはガンダムの量産型です。連邦のモビルスーツ。マイナーキャラなんですけど、僕は子供の頃ジムが好きで、プラモデル10個くらい持ってたんです。ガンダムと違ってジムはライトサーベルも片方しかないし、サッパリ顔だし、武器も貧相なんですけど、すっきりしていてデコラティブじゃないところがいいんですよね。
170 つまりCクラスはシンプルだと、そう言いたいのね?
AKU ボディの面構成がどんどん複雑になっている最近のトレンドの中では、シンプルな方なんじゃないかと。エッジも効いてるし、平面も曲面もあるんだけど、それぞれの線がうまく整理されているんですよね。特にボンネットの分割線が、ヘッドライトの中を横切ってウエストラインに繋がってるところが好きです。純粋にキレイだなって思う。

170 それは理解できる。メルセデスだって中国市場を意識しているだろうけれど、BMWほど迎合してはいない。まだまだメルセデスらしい落ち着いた佇まいは残しているからね。そこはホッとしているんだ。いずれにせよクルマのデザインはモビルスーツ方向に向かってほしくないんだよなあ。
AKU トナオさんが言いたいことはよくわかりますよ。市場を広げて利益を追求しなければ、どんなに大きなメーカーだっていつ潰れるかわからない時代ですから、もはやあらゆる製品はグローバル化を避けられないんですよね。メルセデスだって日本人やアメリカ人、中国人にもたくさん買ってもらわなくては、経営的に厳しい。工業製品である限り、そうして均一化していくのはやむを得ないかもしれない。それはわかってる。でもね、あくまでクルマ好きの戯言として、理想を述べさせてもらうならば、ドイツ車はドイツ人に向けて作ってほしいんですよね。イタリア車はイタリア人に。アメリカ車はアメリカ人に。それぞれの国民性を反映した製品を、よその国の人がつまみ食いするから趣味になるわけだし。それを過去のクルマでしか楽しめないというのは、やはりさびしいことですよね。
170 そうなのよ。工業製品の個性って国民性なんだよね。機械に対する異常なまでの真面目さがドイツの特徴だったから、そこがまず前面に出てこないと語りにくい。っていうか好きになるきっかけを持てない。
AKU そういうドイツ車らしいとか、アメ車らしいとかって感覚、最近ないですよね。メカニズム的にはメーカーそれぞれ特色がないわけでもないけど。トヨタならハイブリッドだし、BMWなら直6エンジンとか、アウディならDSGとか。じゃあメルセデスはどうなんだろう?あえて言うなら、今は7速ATなのかな。

170 Cクラスに関して言えば、ラインナップ全モデルを7速ATにすればよかったんじゃない?「7速に乗りたい!」という明確な理由を植え付けてくれればいいのにね。
AKU それ、賛成。
170 でしょ?
AKU コストの問題で実際は難しいんでしょうけど、小排気量のモデルこそ7速がいいと思うんですよね。今の6.3積んだAMGなんて、トルクも上の伸びもすごいから、実際7速なんていらないんですよ。公道を走ってる限りパドルシフトを使いたい場面も無いし、昔のアメ車みたいに1〜2速のミッション積んでた方が、逆に楽しいんじゃないかとさえ思う。でも今回試乗したW204だと、ちょっと非力だからミッションで補いたい感じじゃないですか。W203の頃の4気筒はまだブンブン言ってましたけど、最近のはかなり振動が小さくなってスムーズになってますからね。エンジンがそういう進化を遂げてるだけに、7速との組み合わせはおもしろいと思うんです。燃費も良くなりますし。まぁ、とはいえ4気筒のCクラスはメルセデスのドル箱ですからね。それを値上げするわけにはいかないんでしょうけど。せめてオプションで選べたらいいのに。
170 本当にそう思う。っていうか、今回乗ってない7速ATでここまで話を引っ張っちゃって、ごめんなさい……。
次回(3/3)に続く……