添加剤の真実:3

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執筆者:AKU (1999.7.18)

私が初めてテフロン系の添加剤という物を知ったのは今から5年程前の事です。当時は友達の影響でオートバイいじりに凝っており、解体屋で買ってきた古いカワサキを磨いてレストアの真似事をしていました。その時に一番バイクいじっていた友達が、テフロンを使った添加剤をバイクのオイルに添加していたのです。テフロンを添加する事のメリットは彼の説明によると、

1.ギヤの寿命が伸びる.(バイクはエンジンとミッションが一体の為)
2.シリンダー内壁の傷を埋めてオイル上がりを防ぐ.
3.焼き付きを防止する.
4.燃費が向上する.

といったものでした。

この説明を聞いて私は単純に納得していました。何故なら我が家でもテフロン加工のフライパンは必需品でしたし、工作機械等の潤滑にテフロンを併用するっていう話は聞いた事があったからです。その話を聞いてから雑誌の広告を気にして見てみたりカー用品店も見てみましたが、それらの添加剤は値段が高かったので8万円で買ったバイクに使う気にはとてもなれず、結局買いませんでした。

それから2年ほど経って添加剤の事はすっかり忘れていたのですが、ある時その頃乗っていた国産車の調子が著しく悪化した事がありました。アイドリングが異常に低くなり、ハンドルを一杯に切るとストールする始末。当然吹け上がりも悪く、ターボディーゼルだったので黒煙モウモウでした。この車は走行距離もすでに15万キロに達していて、ヘッドからもかなり音がしていたので寿命かなと思いましたが、車を買い替える余裕が無かったのでダメもとで整備する事にしました。といってもディーゼルは点火系がありませんから、基本的にはエアフィルターとオイルエレメントを交換して、オイルもちょっと高いやつにしたくらいです。で、その時にふと添加剤の事を思い出し、これも入れてみたわけです。ブランドは忘れてしまいましたが、普通のカー用品店で買ったのでマイクロロンではなかった事は確かです。

さてこの簡単なメンテをやった後、車の状態は劇的に変わりました。もちろん新しいオイルと新しいエアフィルターのせいもあるでしょうが、それまで何をやっても減らなかった黒煙が明らかに少なくなったのです。加えてヘッドからのタペット音も静かになり、加速も燃費も向上しました。この現象がオイル添加剤によるものだったのは明らかだったのです。それから5000kmほど走ってその車は友達にあげてしまいましたが、オイル交換をした後も特に具合が悪くなるような事はなく、その結果に大変満足しました。

初めて添加剤を入れた後、雑誌等でもテフロン系添加剤に関する記事が目につくようになりました。深夜テレビで宣伝が始まったのもこの頃だったと思います。それらの記事の内容はよく覚えてませんが、同じ様な効果を発揮すると思われる添加剤の中にも色々な質の物があり、質の悪い物ではオイルラインを詰まらせてしまうという事がよく書いてあったような覚えがあります。また最も信頼されているブランドとしてマイクロロンの 名前がよく見られ、これはヤナセや東急ハンズなどの限られた店でしか手に入らないという事も知りました。

添加剤を入れた国産車は私がSLを買った事で置き場所が無くなり処分したわけですが、SLを買った時にも最初のメンテとしてテフロン系添加剤を入れる事にしました。ブランドはそれまでに得た情報からマイクロロンに決め、二子玉川の東急ハンズで購入。早速家に帰って入れてみました。マイクロロンの説明書には施工方法が詳しく書いてあり、またオイル量に対して添加する量も厳密に決められている点や、注入用の容器が添付されている点が以前に購入した物と異なっていました。私はその用意周到な内容に信頼感を覚え、その効果に期待したのです。

マイクロロンを添加した後、SLには際立った変化は見られませんでした。しかしそれでも吹け上がりは体感的に良くなり、自分としては効果があったと感じました。以前に添加した時ほど効果を感じられないのは、例の国産車が非力なディーゼルだったのに対しそもそもSLがパワーのある大排気量エンジンであることと、メカノイズも最初から少なかったせいだと思ったからです。しかし同時に、ちょっと妙な現象も見られました。それまでオイル漏れの見られなかったオイルパン周辺がオイルで濡れており、駐車場にオイル染みも出来るようになったのです。以前の国産車では気になりませんでしたが、これは単純に大きなアンダーガードがあったので気づかなかっただけかもしれません。このオイル漏れについては、箱に記載してあった輸入代理店に電話をして、理由を尋ねてみました。その時の説明によると、マイクロロンを添加したオイルは浸透力が強くなっているので、どうしてもオイルが滲みやすく、したがって古い車に注入する際には注意が必要との事でした。私はこの答えの真意がよくわかりませんでしたが、そもそも化学の知識が全くないので特に疑問も感じませんでした。ただこのようなデメリットもあるのだ、という認識をしただけです。

それ以来テフロン系添加剤についての私の意見は、簡単確実にエンジンの調子を良くする優れたケミカルであるという事と、しかしながらオイル漏れを誘発するのでガスケットの弱い欧州車や古い車には注意が必要、という2点でした。しかし98年の秋頃にMB-Netの常連さんを通して、ある文書を受け取りました。そしてそこには信じがたい内容が書かれていたのです。

その文書に書かれていた内容とは、まずほとんどのテフロン系添加剤の広告に虚偽があるという事、そしてアメリカでは既に訴訟が起きているという事でした。そう、この文書こそCAMさんがマーケティングリサーチを通じて詳細な研究をした末に書かれた報告書そのものだったのです。私は一瞬目を疑いました。自分が信頼していたマイクロロンまでこの中には含まれているではありませんか!そしてそれを受け取ったのとほぼ同時期に、偶然にも掲示板で添加剤の事が話題になりました。そこでは今度はCAMさんではなく、OZWさんが衝撃的な投稿をされたのです。曰く、これらの添加剤がさも効果があるように感じてしまうのは、成分に含まれているオイルの粘度を下げる効果があるせいだろうという事。この時、私の中にあった2つの点と点がはっきりとした線で結ばれました。つまり、マイクロロンを添加した事によって起きた吹け上がりの向上というメリットと、オイル漏れが始まったというデメリットは、実は全く同じ理由によるものだったのです。

私はCAMさんの文書を読んでからこれは問題提起の必要があると感じましたが、自分自身が全く予備知識を持っていなかったので、色々なサイトや専門誌を通じて自分なりにオイル添加剤の事を勉強する事にしました。そこで得られた情報は、メーカーによる具体性に乏しいグラフデータや体験談を除けば、どれもOZWさんやCAMさんの意見を裏打ちするものばかりでした。最近の高性能をうたったハイグレードオイルはそれ自体が添加剤の塊のような物である事、非常に負荷のかかる内熱機の潤滑にテフロンは適さないという事、モリブデンの様に色々なオイルメーカーが添加している、効果が立証されている成分は金属に定着せず、オイル交換の度に添加する必要があるという事などです。正直言って今でも理論的な所はよくわかりませんが、単純にテフロン系添加剤のメーカーがアピールしている内容に虚偽があるであろう事だけは私でもわかります。

これらのデータを前にすると、テフロンを使った添加剤はどれも信用出来ないという結論に達してしまいます。しかしながら、それだけでは説明のつかない事もあるのです。例えばGM社の場合、もし同社の車両にテフロン系添加剤を使用した場合は一切の保証をしないという宣言を米国内でしています。しかし同社の日本の輸入・販売代理店であるヤナセでは堂々とマイクロロンを販売しているわけです。またマイクロロンの販売代理店にはトヨタのディーラーも一部含まれており、オイルメーカーと様々なケミカルを共同開発しているトヨタが何故テフロン系添加剤の販売を黙認するのかという疑問があります。更に言えば、添加剤を使った事によって起きうる様々なエンジンの障害を想像するならば、その責任を問われかねない日本国内の自動車メーカーや油脂メーカーが何故その問題点を指摘しないのか、という点も疑問です。

この問題の根底には争いを避けて通ろうとする日本人気質の様な物があるような気もします。しかしその被害を被るのは、得られる情報に限りがある我々ユーザーです。またその情報に乏しい日本のマーケットを利用して商売をしている外国企業にも憤りを感じます。このページを読んだ貴方は貴重な情報を得た事で添加剤によるリスクを避けられると思いますが、他の多くの人々はこの事実を知りません。ですから今後の日本の自動車マーケットの為にも、是非貴方の御意見や体験談をお寄せ下さい。よろしくお願い致します。


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