INDEX
焦らない!
人気車種は新車の方が得
値段と程度は比例する
店をよく選ぶ
年式やグレード、カラーにこだわらないのも得策
車を見に行くときは
車のどこを見るか
必ず試乗する
事故車に気をつける
多走行車を見破る
中並車は要注意
記録簿をチェック!
納車整備について
値引きはがんばりすぎない方がいい
「保証つき」に惑わされない
オークションで購入
個人売買で購入
下取り
最後に



●焦らない!

 誰でも新しい車を購入するとなると浮足立ってしまいます。しかし、MBに限らず外車中古車は個体ごとの程度がバラバラですから、焦って購入してしまうと後で後悔するハメになりかねません。車探しにはなるべく時間的なゆとりを持って、じっくりと探すのが良いでしょう。



●人気車種の中古車は割高

 これはMBに限った話ではありませんが、中古車の相場というものはその時の人気に左右されます。MB自体が値落ちしにくいメーカーである上に、特に最近ではRV系の車に人気が集中していますから、MBの歴代ワゴンモデルは非常に相場が高くなっています。いくら人気があるといっても中古車ですから新車の値段より高くなることはありませんが、手放す時の下取り(または売却)価格や修理費用を差し引くと新車を買うのと大差無い場合もあります。もし貴方が人気車種を手に入れて、2〜3年で手放すのであれば、その間の実質的な費用をよく計算した方がいいでしょう。
 また人気車種の中古車はその需要の多さにつけこんで、普通ならとても商品とは呼べないような個体が高額なプライスをつけて店頭に並んでる場合もあります。もしそういう車を買ってしまうと、修理費用その他で新車が一台買えてしまうほど費用がかさんでしまう場合もありますから気をつけましょう。



●値段と程度は比例する

 「中古車に掘出し物はありえない」といわれるぐらい、中古車店における車の値段と程度は比例します。もちろん店によって若干値段は違いますが、基本的にはどこの店でも「現時点での相場」を意識しながら値段を設定していますから、格安車両というのは非常に少ないと言えます。旧車のような言い値で売買される車種は別として、程度の良い車を購入するならばあまりにも安い車は避けた方がいいでしょう。後々大金をつぎ込むような事になれば、たとえ安く買っても決して得はしません。



●店をよく選ぶ

 一口に中古車店といってもその内容は様々です。ディーラー直営の大規模な店もあれば、在庫が5台にも満たないような個人経営の店まであります。しかしどんな店で購入するにせよ、その店が信頼できるかどうかを見極めることが肝心です。

 例えばディーラー系の店の場合は、新車を購入した時とほぼ同等のサービスが受けられます。事故車を偽って販売する事もまずありませんし、全ての車両はディーラーの工場で入念な点検・整備が施されてから店頭に並びます。大抵は期間限定の保証がつき、購入後のトラブルも安心出来ますので、最も信頼できる店と言えるでしょう。しかしその反面、価格は高めになる傾向があります。また年式の新しい車種が多いので、古い年式の車が欲しい場合は他の店を探さなければなりません。

 ディーラー以外でも大規模な店は信用を重視しますし、比較的安心できるでしょう。自社工場を完備していれば言うことありませんが、もし無くても腕のいい工場やディーラー工場に修理を依頼している場合が多いので、あまり心配する必要はありません。ただし中には大規模安売り店という類いの店もあります。これは主に中古並行輸入車を販売する店が多いのですが、そのままでは値段のつかないような格安車両に中古部品を組み合わせて商品に仕上げて販売します。海外で走っていた車両は、かなり走行距離が多くても日本で同じ距離を走行した車両ほど外装などの痛みがなく、中古並行車を販売するのはそのためです。このような店は値段が安く、掘り出し物を見つけられるというメリットもありますが、たいがいは経費を削減して価格を安くしているのであまりサービスには期待しない方がいいでしょう。また事故歴や修復歴もはっきりとはわかりませんから、自分で車の程度を見極める自信の無い人は避けた方が賢明です。

 そのほかでは個人経営の店がありますが、これが一番件数も多く、店の内容も様々です。小規模の店の場合はその店の社長の性格が店にそのまま反映されますから、非常に誠実な店もあれば不誠実な店があるのも事実です。国産車を中心に扱う店の場合は「日本中古自動車販売協会連合会(中販連)」や「自動車公正取引協議会(公取協)」に加盟しているかどうかというのも店の信用度を測る一つの基準ですが、外車専門店の場合は加盟していない店が多く、加盟していないからといって「信用できない」と考えるのは早計です。やはり「試乗に快く応じてくれるか?」「修復歴を正直に教えてくれるか?」「展示車の手入れが行き届いているか?」「質問に対して的確な返事をしてくれるか?」といった事で信用できるかどうかを判断するしかありません。
 例えば「この車は何故安いのですか?」と聞いた時に、「下取りですから」とか「安く仕入れられたので」という返事が返ってくるようでは困ります。中古車屋も馬鹿ではありませんから高く売れる人気車種をわざわざ安く売るような真似はしません。何か理由があります。「走行距離がちょっと多いので」とか「内装に痛みがあります」「ボディカラーが不人気色なので」「修復歴があります」といった理由を正直に答えてくれる店の方がやはり安心できます。

 このように書くと小さな店にはいいことが無さそうですが、古い車や個性的な車を探そうと思ったら大規模店ではまず無理です。また程度はすごく良いけど年式が古いので格安、というようなお買い得車もこのような店の方が見つかりやすいでしょう。社長や店員さえちゃんとしていれば、大きな店よりもフレンドリーで後々まで(次の車を買うときも)よい付き合いが出来ますし、小さな店ならではの良さもたくさんありますから、とにかく店選びは慎重にしたいものです。希望通りの車が在庫に無くてもオークションや業販で探すことはいくらでも出来ますから、車選びの前にまず店選びから始めるのも良いでしょう。



●年式やグレード、カラーにこだわらないのも得策

 中古車の場合、年式やグレードに価格が左右されます。より新しく、よりグレードの高い車に人気が集中するからです。しかし、中古車の場合はあくまでも程度重視で選ぶべきでしょう。
 年式が新しくても手入れがされていなければ何にもなりませんし、古くてもちゃんと手入れされた車は安心して乗ることができます。限られた予算内で選ぶなら、少しでも程度のいい、お金のかからない車を選ぶべきです。
 グレードに関しては同じW124でも300Eと260Eでは値段が全く違いますし、乱暴な運転をするオーナーは少しでも排気量の大きい車両を選びますから、排気量の小さなエンジンを積んだ車両には程度の良い物が比較的多いのも事実です。燃費などを考えても小さな排気量の車を選ぶのは、かなりお買い得だと言えるでしょう。
 また程度重視という意味で言えば、ボディカラーにもあまりこだわらない方が賢明です。人気のあるカラーはそれだけ値段が高くなりますし、売りやすい車両というのは程度の悪いものが多いのです。全くこだわらない、とまではいかなくても、ある程度選択の幅を広げることで、良い程度の個体が見つかりやすくなります。



●車を見に行くときは

 一番重要なのは晴れた日の昼間に見に行く事です。これは絶対です。雨が降っているとボディのキズや歪みが見えませんし、オイル漏れなどもわかりません。何よりも雨に濡れるのがいやで落ち着いて見ることが出来ませんから、重要な問題を見逃してしまう危険があります。
 またたとえ晴れていても夜見に行くのは止めましょう。とにかく暗いと細かい部分が見えませんし、昼間見るときと比べて車がきれいに見えてしまいます。特にボディ表面の細かなキズや塗装ムラは太陽光が当たった時によく見えますが、夜ではこれがよくわかりません。
 また同じ理由で屋内展示された車両を見る時も注意が必要です。照明が明るければ細かい部分もよく見えますが、ボディ表面の細かなキズだけは太陽光でなければ見えません。中には車がきれいに見えるように照明を暗くしている店もありますから、そのような店で車を買うのは避けた方がいいでしょう。

 もう一つ、車を見に行く時はなるべく友達と一緒に行きましょう。その友達が車に詳しければもちろん言うことありませんが、たとえ車に詳しくなくても誰かを連れていくべきです。一人で見に行くと「欲しい!」という気持ちからつい問題点を見逃してしまいがちですが、店の人間はそこにつけこんで熱心に購入を勧めてきます。その点第三者は冷静ですから「ここ凹んでるよ」なんて本人が見逃していた問題を見つけてくれる場合があるのです。ですから出来ればメルセデスに乗っている友人や、車に詳しい友人と一緒に見に行くのがベストでしょう。



●車のどこを見るか

 まず車を平地に置いてあらゆる角度から見ます。少し離れて見るのがいいでしょう。車体が傾いていないか、ボディに歪みがないか、塗装ムラがないかといった総合的な部分をまずチェックします。
 ボディパネルの歪みは、車体に写りこむ景色を見てチェックするのがいいでしょう。MBのボディは非常にしっかりしていますから、修復していなければ景色もきれいに写ります。もし景色が大きく歪むようなら手で触ってみます。手で触って異常がなければ反対側の同じ部分を見てみます。両側同じ部分が歪んでいるのならばその歪みはパネル形状によるものだと考えられますが、もし片方だけだとその部分を修復している可能性が高いと言えます。
 またパネルとパネルのすき間を見るのも有効です。これは「チリ」といいますが、このチリを左右で見比べます。わかりにくければ爪をあてがったり、コインを挟んでみるとわかりやすくなります。事故を起こした車両はこのチリが合ってない場合が多いのですが、最近では板金技術が向上してチリを正確に合わせる工場もありますので、これだけで修復歴があるかどうかを判断するわけにはいきません。しかし、チリも合っていないようではちゃんとした修理がされていないかもしれないので、注意が必要です。

 外装のチェックが一通り終わったら次は内装です。車に乗っている時は常に内装を見ているわけですから、内装の程度が良い車は満足度も高いと言えるでしょう。
 まずシートのヘタリを見ます。助手席と運転席を座り比べてみましょう。たいがいは運転席の方がヘタっていますが、この差があまりにも大きい物はパスしたほうがいいです。特に革シートはヘタリからくる表面のシワが後々ひび割れになりますから、そうなると深刻です。MBの革シートの張り替えは高額ですし、すでにひび割れている場合はもちろん、ヘタってシワの多くなった革シートも避けた方が無難です。煙草の焦げ跡がないか、染みがないかといった事もよくチェックしましょう。

 古くなった車の場合、ダッシュボードにも痛みが見られます。屋外保管の車は特に紫外線の影響を強く受けますので、縮みやひび割れが起きてしまうのです。縮みの見分け方としてはグローブボックスとその外側の面が合っているか、メーターパネルがきちんと収まっていてガタがないかなどをチェックします。MBのメーターパネルはダッシュパネルに差し込んであるだけなので、パネルが縮んでいると収まりが悪くなるのです。メーターパネルが少し浮いているような感じならダッシュボードが縮んでおり、走行中にミシミシと音をたてる原因になるので要注意です。

 次はエンジンルームです。エンジンの事はよくわからない、という人でもオイル漏れや滲みぐらいはわかるでしょう。エンジンオイルの滲み以外にもクーラーのガスやパワステ・フルード、ブレーキ・フルード、冷却水なども漏れていればわかるはずです。とにかく水や油で中が濡れていないかを注意して見てみましょう。エンジンオイルが滲んでいるぐらいなら走行には支障ありませんし、ある程度古くなった外車にはつきものです。しかし、それ以外のフルード類の漏れはトラブルに直結しますから入念にチェックするべきです。またオイル類が漏れていると車の下にも落ちますから、車の下回りの濡れ具合もよく見ましょう。
 これらのオイル漏れの類いは事前にきれいに拭き取ってあるとわかりません。ですからエンジンをかけてある程度暖まったあと、試乗したあとにも再度エンジンルームを見てみましょう。短時間であまりにもオイルが滲むようだと問題があります。パスしたほうがいいでしょう。



●必ず試乗する

 車は走るための道具です。ですからどんなにきれいでも、どんなにカッコよくても、ちゃんと走ってくれなければ意味がありません。最近では試乗せずに車を購入する人が増えているそうですが、全くのナンセンスです。必ず試乗しましょう。
 また、できれば複数の同じ車種を乗り比べてみるべきです。何台か乗ればどの程度が普通なのかわかってきますが、一台だけだと比較対象がないのでどこが良くてどこが悪いのか全くわかりません。どこかおかしいと感じる部分があっても、中古車屋は「こんなもんですよ」と答えるのが常ですから、後悔したくなければ何台も試乗してみましょう。中には「売約しなければ試乗させない」なんて店もあるようですが、そんな店からはとっとと退散しましょう。後々のサービスも期待出来ません。

 まずエンジンをかけたらすぐに排気煙を見てみましょう。煙が見えにくければ空ぶかししてすぐに見に行きます。このとき煙が黒いようだとガソリンが濃い(燃料調節が濃い)といえます。すぐに煙が透明になるようならあまり心配はいりませんが、継続的に黒い煙が出るようだとちょっと問題です。インジェクターの不調でガソリンが濃くなっているか、アイドリング調整がうまくいかない車の燃調を濃くして、無理矢理アイドリングを上げていると考えられます。またガソリンが濃い車は燃費も悪くなっているのでパスしましょう。
 今度は煙が青い場合です。これはオイルがシリンダー内に漏れて、ガソリンと一緒に燃えてしまっている場合に起こります。特に始動直後と、アクセルを吹かした時に大量の青い煙が出るようだと、オイル下がりやオイル上がりを起こしている可能性があります。また排気煙の臭いも嗅いでみましょう。オイルの焼けた臭いがするようなら、間違いなく燃焼室内にオイルが入っています。簡単な修理で治る場合もありますが、こういう車はパスした方が無難でしょう。
 白い煙が出る場合は、大抵はただの水蒸気です。これは結露によってエンジン内や排気管に溜まった水分が、水蒸気となって吹き出しているだけで、特に寒い時期には普通の事です。ただの水蒸気なら普通の排気臭ですし、時間が経てば無色に近くなるのでわかります。

 エンジンがある程度暖まったらATの調子をみてみましょう。MBに限らず欧州車は日本車に比べてATが弱いのがウイークポイントですし、修理するとなるとかなりお金がかかるので、入念にチェックする必要があります。
 まずブレーキを踏んでシフトレバーを「N」から「D」にいれてみます。この時、1秒以内にギヤが入れば合格です。もしこれが2〜3秒、もしくはそれ以上かかるようだとATの寿命が近づいている証拠です。またギヤが入る時に「ガンッ」という大きな音がするのも問題ありです。シフトショックそのものは駆動系のゴム部品が痛んでいても大きくなりますが、ATが痛んでいる場合は金属的な大きな音がします。「ググッ」という音なら問題ありません。
 次にサイドブレーキをかけ、フットブレーキも踏んだままでATを「2」に入れ、アクセルを踏んでみます。この時、タコメーターの針があまり上がらずに車が進もうとするならば合格ですが、車が進もうとしないのにタコメーターの針が大きく振れて、エンジンが簡単に吹け上がってしまうようだとATが滑っている可能性があります。ATの修理は非常にお金がかかりますし、よっぽどその車に固執する理由でもない限り、問題のありそうな車はパスした方が賢明でしょう。

 走り出したらまずハンドルから手を放しても真っ直ぐ走るかどうかをみましょう。完全に水平な道路はありませんから多少は曲がるかもしれませんが、どちらか一方にハンドルがとられて手が放せない、なんていうのは問題ありです。またハンドルの遊びもみてみましょう。古いMBはステアリングにガタが出やすいので、注意が必要です。車線変更などでハンドルを切ってすぐに車が反応するようなら合格ですが、ワンテンポ遅れて反応するようだと問題ありです。
 ブレーキの効き具合も要チェックです。ブレーキは安全を確保する為に最も重要な機能ですから、効きが悪い、ハンドルがとられる、振動がある、そんな車はパスです。
 そのほか試乗中にチェックするべきことは山のようにあります。隣に乗っている店員の話はそっちのけにして、異音がないか、おかしな動きはないか、ATはちゃんと変速しているかなど全神経を集中してチェックしましょう。くれぐれもラジオを聞きながら、なんて事のないように・・・。

 試乗して走行に問題がない事がわかったら、エアコンなどが正常に機能するかどうかも調べておかなくてはなりません。エアコンのトラブルは最もお金がかかる修理の一つですから、冬でも必ずチェックしましょう。またパワーウインド、パワーシート、警告灯、シートヒーターなどなど電気関係の部品が全て正常に機能するかどうかも一通り試しておき、動かない物は修理してから納車出来るかどうか聞いてみましょう。



●事故車に気をつける

 事故車というのは「事故を起こした車」ではありません。中販連や公取協によって定められた事故車の定義に該当する車両を「事故車」または「修復歴車」と呼びます。(事故車の定義はこちら)従って事故を経験した車でも、フェンダーやボンネットを交換・板金修正してぐらいでは事故車とは呼びません。
 事故車はフレームなど、車を構成する重要な部分に手が加えられています。そのため、次に事故を起こした際に設計段階での予想通りに衝撃を吸収するかどうかわからないという点が問題になります。現在では車の修復技術も向上し「真っ直ぐ走らない!」なんて事はまずありませんが、事故車はやはり評価額が低くなります。事故車と知っていてその分安く買えるのならそれもいいのですが、問題はそれと知らずに買ってしまう場合です。オークションなどでは車の詳細なデータが配られるので、業者が事故車に気付かない事はまずありませんが、事実を隠して車を販売する不誠実な業者も中にはいます。また個人売買でも相手が事実を隠す場合がありますから、気をつけた方がいいでしょう。
 事故車の見分け方は非常に難しく、素人の手に負えるものではありません。ですから、第一に信用のおける店で購入するのが肝心だと言えるでしょう。



●多走行車を見破る

 中古車につきものの「詐欺行為」がメーターの巻き戻しです。最近の車は簡単には巻き戻せなくなりましたが、ちょっと古いMBだと簡単に出来てしまうのです。D車などを中心に扱う信用重視の店ではほとんどありませんが、素性のわからない並行輸入車を多く扱う店では騙される危険もあります。記録簿など走行距離がはっきりわかる証拠が無い場合には、注意した方がいいでしょう。またワンオーナーのD車なのに記録簿がない、なんて場合も要注意です。ディーラーで新車を買ったオーナーが記録簿を紛失することは非常に稀ですから、意図的に破棄されたと考えるのが妥当です。どちらにせよ記録簿の無い車は基本的に「走行距離不明」と考えるべきでしょう。

 そもそも車の程度というのは走行距離に完全に比例するわけではなく、高速道路の走行が主体で距離は走っているけど程度が抜群にいい車もあれば、奥様の買い物車としてロクな整備も受けずに年間1000キロしか走行していないボロ車もあります。ところが車を自分で整備する習慣のない日本人は「走行距離が少ない」というだけの理由で車の程度を判断してしまうので、業者はそこにつけこむのです。ですから中古車を見る時にはなるべく最後までメーターの距離計を見ないというのも一つの方法です。他の部分を良く見て、程度に満足できたら初めて距離計を見るようにすれば、車の程度を冷静に判断する事が出来ますが、最初に距離計を見てしまうと先入観から間違った判断を下してしまいがちなのです。
 いくらメーターを巻き戻しても、ボディを磨いてもごまかせない部分もあります。ドアのサイドステップの痛みやアクセルペダル、ブレーキペダルのすり減り、シートのヘタリ、ハンドルの痛みなどがそれです。5万キロ以内の走行でこれらが著しく痛んでいる(すり減っている)なんて事はまずありませんから、注意して観察してみると良いでしょう。またこれらを隠すために新品パーツに交換している場合も要注意です。



●中並車は要注意

 メーターの巻き戻しが一番多いケースとしては中古並行車が挙げられます。海外では日本に比べて高速道路が発達していますから、年間10万キロ近く走る事も普通です。しかし高速道路での走行が主体の車は距離の割には程度が良いので、メーター巻き戻しの格好の材料なのです。総走行距離が数十万キロにも及ぶ車を格安で海外から仕入れ、同じく格安で調達した中古部品を使って商品に仕上げる、といったビジネスが最近の自動車輸入業者に浸透しつつありますが、これらは人気車種を安く手に入れられるというメリットがある反面、やっぱり多走行車なりのトラブルは多くなります。各部がOHされているなら話は別ですが、そのままの状態ではいくら外装がきれいでもエンジンを含む駆動系の部品は寿命が近づいてますから、長く乗るつもりなら避けた方がいいでしょう。
 海外だからといって特別に中古車の相場が日本より安いというわけではないのです。特に高年式車両の値段は日本も海外もほとんど変わらないので直輸入だから安いという理由はありえません。運賃、ガス検といった輸入にかかる費用を差し引いたらよっぽど安く仕入れなければ商売にはなりませんから、安い車には安いなりの理由があると考えた方がいいでしょう。

 しかし中並の全てがいけないというわけではありません。製造から10年以上経過した車の場合、高温多湿の日本で乗られていた車より、湿気の少ない北米やヨーロッパで乗られていた車の方が程度が良い場合が多いからです。錆は古い車にとって命取りですから、古い車を探すのであれば海外から輸入された車を探した方がいいでしょう。また海外には車のレストアを専門に行う業者が多く値段も安いので、レストア済み車両を輸入している業者も増えています。しかし最近は為替の関係や国内景気の関係で、レストア済みとはいえ必ずしも輸入するのが安いとは言えないのも事実です。



●記録簿をチェック!

 「記録簿つき」を売りにしている車も多く見られますが、ただついているだけじゃ意味がありません。まず点検内容が全て記録されているかどうかを確かめましょう。6カ月以降が全くの白紙なんていうのは問題外としても、出来れば車検整備だけはディーラーで行っていた車両が安心です。ディーラーでの24カ月点検は非常に厳しい基準で整備されていますから、消耗部品も十分に交換されていて安心して乗ることが出来ます。それに対してただ車検を通すためだけに整備された車両は交換するべき部品が交換されていないケースが多く、安心して乗れるとは言い難い個体も中にはあります。

 また悪質な業者では、記録簿を改ざんして距離をごまかすケースが見られます。そういった意味でも、ディーラーの判が押された記録簿の方が安心出来ると言えます。

 最近ではユーザー車検制度が浸透し、これを代行する業者も多くあります。しかしユーザー車検制度では、法定24カ月点検は義務づけられていませんから、ユーザー車検用の整備記録(手帳ではなく紙一枚のもの)だけでは、充分な整備が行われているかどうかわかりません。「記録簿つき」と銘打った車両の場合は、必ず整備手帳に12カ月、24カ月点検等が漏れなく記入されている事を確認しましょう。



●納車整備について

 中古車の場合「納車整備」というのがつきものですが、この整備にあまり期待しすぎるのは禁物です。中には24カ月点検に近い非常に入念な整備を施す店もありますが、大抵は6カ月点検程度になります。6カ月点検では点検項目も非常に少なく、(車検が何時かにもよりますが)とても次の車検まで安心して乗れる内容とは言えません。この点検をサービスで行ってくれるならまだいいのですが、ろくに点検もしないで数万円の「点検費用」を請求する店も中にはあります。その場合にはあえて「現状渡し」で安く購入し、自分で信頼できる工場に点検を頼む、という方法もあります。



●値引きはがんばりすぎない方がいい

 車を購入する際には「値引きが命」と考えている人も多いようですが、新車ならともかく中古車ではあまりがんばらない方が得策です。車屋としても強引に値引きをした客の印象はよくありませんし、納車点検を省略する、後々のサービスが悪くなる、修理代金を水増し請求されるなど、決して良い結果とはなりません。もし貴方が懇意にしてる腕のいい工場があって、車は現状渡しで購入、買った後は一切店とも関係しない、というのでなければ値引きはほどほどにしましょう。



●「保証つき」に惑わされない

 最近では中古車でも「保証つき」を売り文句にする店が増えてきました。しかし、この保証がいったいどこまでなのか、をよく確認しておく必要があります。ディーラー系の店ではかなり広範囲のトラブルを保証対象としていますが、それ以外の店では保証の範囲がかなり限定されます。
 例えば「エンジンがかからない」とか「シフトアップしなくなった」というのは明らかにトラブルですから無償で治してもらえるでしょう。しかし「たまにエンジンがストールする」とか「たまにアイドリングが不安定になる」という程度では、実用上は全く問題が無いだけになかなか対応してもらえない事が多いようです。しかし実際にはこのようなトラブルの方が多いわけですから、意味のない保証つき車両を割高な値段で購入するぐらいなら、初めから保証なしの車を安く買った方が得かもしれません。



●オークションで購入

 中古車の仕入れは通常の買い取り、下取りのほか、オークションでも行われます。このオークションに参加できるのは資格を持った限られた人ですが、最近ではオークション代行業者も増えていますから、これを利用する手もあります。
 オークションの価格は中古車店での店頭価格以上に人気に左右されますから、比較的人気のない車種では驚くほど安く買える場合もありますし、何と言っても需要と供給のバランスに見合った価格で落札されるので常に内容に見合った適正な価格で購入できます。しかし、業者向けの詳細な査定データを見ることは出来ても、直接目で見て確認できない、試乗できない、現状渡しなどのリスクも伴いますから、中古車店で購入するのとはだいぶ訳が違います。オークションで購入するなら、修理工場や部品調達の手段も含めて、後々のトラブルに対して自分自身で対処出来るようにしておくべきでしょう。

 代行業者の中には中古車販売店がオークション代行を行っている場合もあります。このような業者から購入すればトラブルが起きても面倒を見てもらえる場合が多いので、アフターケアに心配がある場合は良いかもしれません。



●個人売買で購入

 最近盛んに行われているのが個人売買です。個人売買は相場というものが基本的にはなく、言い値ですから掘り出し物も見つかりますし、何と言っても消費税などの諸経費がかからないのが魅力です。ところが中古車店で購入する時のようにローンが組めない、下取りしてもらえない、といった基本的なデメリットのほかにも、実際には意外と問題も多いのです。

 一番の問題は値段と車の内容のバランスです。個人売買の場合は原則的に現状渡し、ノークレームですし利益が目的ではありませんから、値段的には中古車店の売値と買取値の中間が適正値と思われます。しかしどういうわけか多くの「売り」情報は店頭価格を基準に設定されており、とても安いとは言えないものが多いのも事実です。ローンもなし、下取りもなし、整備もなし、アフターケアもなし、もちろん保証もなし、という無い無い尽くしで価格は「相場よりちょっと安め」では全くメリットがありません
 修理にお金をかけたから高く売りたいという売り手の気持ちもわかりますが、いくら整備や修理にお金をかけた車でも、全くお金のかからなかった車でも、程度が同じなら査定額も同じなのが車の売買の基本ですから、「ちょっと安い」だけで個人売買をするのは止めた方がいいでしょう。
 オークションで購入する場合と同じように、信頼出来る修理工場の確保は必須です。また車を見る目を養う必要もあるでしょう。中古車店で購入する時と同じように、何台も乗り比べてみる事が大切です。仲のいい友達が相手ならともかく、個人売買だからといって相手が信用できる人物だとは限りませんから、購入に際しては慎重に車の程度を見極めましょう。個人売買はあくまでも自己責任のもとで行われるものなのです。

   個人売買で気をつけなければいけないのはブローカーの存在です。彼らは個人で所有している車を売りだしているように見せ掛けていますが、実際には店舗を持たない中古車屋です。もちろんただ店舗が無いだけで真面目に商売をしている人もいますが、中には程度の悪い車を売りっぱなしで姿を消してしまう悪徳業者も存在します。そういう悪徳業者にとってMBは格好の商品ですから、粗悪な車を売り付けられないように注意しましょう。見分け方としては本名を掲載していない、携帯電話以外の連絡先を一切教えない、一人で何台もの売り情報を掲載している場合は要注意です。



●下取り

 多くのケースでは今持っている車と入れ換えで購入することが多いでしょう。新車を購入する時と同じように、中古車屋に下取りしてもらうことも出来ますが、業者の下取り価格というのはやはり安いものです。また個人売買などで購入する場合には下取りしてもらえませんから業者に買取ってもらう事になりますが、この場合はさらに安くなってしまいます。この買取り価格も業者によって異なりますから、何件かで査定してもらって比べてみるのが良いでしょう。
 少しでも高く売る方法としては、オークションに出品する、個人売買で売るといった方法もあります。オークションでは最低落札価格を指定すればそれ以上で売れる場合もありますし、個人売買なら業者が間に入らない分、更に高く売れる場合もあります。しかし希望するタイミングで必ず売れるとは限らないので、新しく購入する車と完全な入れ換えをするのはかなり難しくなります。

 また個人売買で車を売る際に多いのが名義変更や金銭授受のトラブルです。車を譲ったのに名変してくれない、残金を支払ってくれないといったケースです。名変は相手任せにせず遠方でも自分で行う、支払いは現金一括で、などの自衛手段を考える必要があるでしょう。



●最後に

 中古車の購入方法は色々ありますが、やはり一番大事なのは何台も車を見て、何台も乗り比べてみる事です。何台も見るうちにその車の程度がよくわかるようになりますし、冷静に見ることも出来るようになります。そして何台も見ているうちに、必ず自分が本当に気に入る車が見つかることでしょう。中古車探しはある意味で根気との戦いなのです。  年式の新しい車両は程度の良いものが多く、不安材料も少ないのですが、5年落ち以上のメルセデスはそれまでの手入れの具合で、車のコンディションが大きく変わります。しかし中古車としての価格的な魅力が大きいのも5年落ち以上の車ですから、メルセデスとの素晴らしいカーライフのためにも、気合を入れて探しましょう。健闘を祈ります(^^)