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三ツ星倶楽部 其之一 W124 300E 2/4 既成概念的ヒエラルキーに縛られない

投稿者: 投稿日: 2009年12月31日 – 00:000

構成/田村十七男・芥川貴之志 撮影/山田裕之

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170 イメージを語るとワケわかんなくなるところもあるので、W124について具体的に紹介してもらえますか?

AKU その時代のメルセデスベンツはモデルイヤー制をとっていて、W124は1984年の11月に’85年モデルとして発表されました。それがデビューです。セダンが先で、ワゴンは翌年の登場。全体的にはW123の正常進化系でしたね。このクラスはメルセデスベンツの看板商品だったから、煮詰めに煮詰めてきたんでしょう。

170 終わりはいつだっけ?

AKU 1995年です。ワゴンは96もあったけど。

170 ってことは、この国のバブル経済の始まりと終わりにもばっちり付き合ったんだ。
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AKU 世界的に景気が良かったから、その時代の記憶に寄り添っているクルマですよね。で、エンジンなんですが、これがよかった! 今回借りた300Eに搭載されているのは、M103という直6、3リッターのSOHCのユニットなんですけれど、W123の2.8リッターDOHCエンジン、M110にくらべて格段にフィーリングが素晴らしいんです。M110は堅牢で丈夫なエンジンなんですよ。でも、パワーが今ひとつで、どこかモッサリしていた。

170 DOHCがSOHCに負けちゃうの? それはスーパーカー世代には納得できん話だぞっ!!

AKU そういう既成概念的ヒエラルキーに縛られない判断を下せるのが、メルセデスベンツの優れたところなんですよ。「最善か無か」ですから。

170 ダスッ、ベベベ…。

AKU まるで言えてませんよ。そんなことより、W124は足回りもよかったですね。特に190Eに先行投入されたリアのマルチリンクは、W123時代のセミトレーリングアームに比べて格段に追従性が向上してます。

170 それ、当時の『NAVI』とかで絶賛していたね。コンパクトモデルでこれほどのサスペンションを採用するのはさすがベンツだって。それに引き換え、小型車が得意な日本はどうなんだ? あはん? って論調だった気がする。そう言えば最近は自動車雑誌を読まなくなったなあ。
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AKU それ、世間一般にも言えることでしょう。なんででしょうね。

170 クルマの家電化、あるいはエコ問題の解決や妥協がクルマの生きる道になってきて、パワーだ、デザインだ、300馬力より301馬力がエラいってことを誰も言えなくなって、ちょっと萎えてるんだよ。その観点に立てば、「W124は最後のベンツだ」と叫んでファンが大事にしようとする気持ちは理解できる。そういう感情は、今の雑誌に反映されにくいもんね。

AKU だからこそMB-Netがあるんです。

170 そこへ落とし込む布石だったんだ、オレの発言は? 上手い! やられたっ!!

AKU 別にやっちゃいませんて。話を戻しますよ。サイズについて。W124の大きさって実によく考えられていて、十分に余裕のある車格と道幅とのバランスがちょうどいいと思いませんか?
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170 当時はデカいと感じたけれど、今になって運転してみると、確かにちょうどいいね。いきなり左ハンドルでも戸惑いがない車両感覚だった。しかも後席の足元も広い!

AKU W123とだいたい同じ寸法です。この後のW210でバッと大きくなるんです。その拡大路線は継承されて、現行のCクラスとW124がほとんど変わらないサイズになりました。

170 なんでみんな成長しちゃうんだろ? VWゴルフなんかも最初の小ささがよかったのにさぁ。かといって道幅はモデルチェンジしないのにね。

AKU W124にもストレッチリムジンがあったんですが、香港や中国ではSクラスではなくW124のそれが圧倒的に多いんですよ。道幅の関係だと思いますが。

170 賢いねぇ。賢くありたいよねぇ。

AKU 東京の路地裏じゃEクラスやSクラスで四苦八苦しているオバサンよく見かけますけどね。

次回(3/4)に続く……

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