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三ツ星倶楽部 其之五 W107 500SL 特別編 3/3 インテリア編

投稿者: 投稿日: 2010年7月31日 – 00:000

構成・撮影/芥川貴之志 撮影/山田裕之


さて今回は室内のお話です。インテリアと言ってもいわゆる内装部品のことだけではなく、クーラーなどの快適装備も重要な要素ですので、それらにも軽く触れてみたいと思います。クルマを運転している間は、ずっと室内にいるわけですから、インテリアが整っているかどうかって、満足度をはかる大切な要素ですよね。

痛んだシートはどう治す?

この時代のメルセデスベンツの内装は、欧州車の中ではかなり丈夫な方で、傷みにくいと言えるでしょう。どこかの国のメーカーのように、天井が垂れ下がってきたり、ドアの内張がベロンとめくれたりというトラブルはほとんどありません。しかしシートだけは、どうしても負担がかかる場所だけに、古くなってくるとヤレが目立ってしまいます。これは仕方のないところ。

表皮の傷みに関しては、素材によって直し方が異なりますが、革シートであれば最近は良いリペア業者さんがいて、表面の傷を埋めたりうまく塗装して仕上げてくれるようです。また傷がそれほど深くないようであれば、「染めQ」という名前で売られている補修用塗料などを使って、個人でもきれいに補修することが可能だと思います。傷みがあまりにもひどい場合は張り替えということになりますが、純正のシートカバーは高価な上に納期に時間がかかります。また黒、青以外の色は供給が終わっている可能性が高いので、シート張り替えの専門業者さんに作業を依頼した方が、早く安く仕上がるでしょう。ただしシートの張り替えは技術の差が大きく出ますから、施工業者の選択は慎重に。

ファブリック(布)シートの場合も内装専門の補修屋さんであれば、破れたり摩耗した部分をもとの生地とうまく色合わせして、補修出来るようです。しかし非常に手間のかかる作業であるため、面積が大きいと費用もかなりかかってしまいますので、補修するよりも革シートに一式張り替えをする方が多いように思います。

また一見革シートに見えて、実は合成皮革のMBテックスという素材を使ったシートもあります。MBテックスのシートはディーラー車ではあまり見ませんが、並行輸入車ですと珍しくありませんし、またディーラー車であってもドアパネルの表皮にはこの素材を使っています。MBテックスは大変丈夫な素材なため、傷や破れが生じることは稀ですが、もし補修が必要であれば革シートの補修と同じ作業をすることになります。

そして次にシート内部に関してですが、W107特有の症状として座面の歪みがあります。シートベースのスプリングが独特の形状のため、ヘタリが出やすいのです。この傾向は特に’86年以降の後期型に顕著に見られ、気になっているオーナーの方も多いのではないでしょうか。特に運転席側の座面が、ドア側に傾いてしまっているクルマが多いようです。

上の写真はモデルイヤー’86のSLのシートベースです。’85以前も基本的な構造は変わりませんが、材質等が微妙に変更されているのでしょうか、部品番号も違いますし定価ベースで見ると初期型の方が高価です。これがコストダウンのせいなのかどうかは確証がありませんが、後期型の方がシートがヤレていることが多いのは事実であり、その理由の一つがシートベースの作りの違いにあることは、どうやら間違いなさそうです。

そのシートベースですが、実は左右同じ部品番号、つまり同一部品なんです。そこで、もし座面の傾きが気になるようでしたら、まず左右のシートベースを入れ替えてみることをオススメします。まずはそれで気にならなくなると思いますし、そこからまた傾きが生じるまでは、かなりの時間がかかるはずです。もちろんシートベースを購入して交換するのが最善ですが、部品代はかなり高額ですから、こんなお手軽な修理方もアリなんじゃないでしょうか。

またシートベースを入れ替える際には、出来ればホースヘアパッドと呼ばれる内部のパッドと、その表面を覆う麻布を交換して下さい。このパッドはヤシの実の殻の繊維で出来ており、湿気を逃がして座り心地も良くする効果がありますが、劣化すると潰れてきてしまいます。麻布の状態も座り心地に大きく影響しますので、張り替えの効果は大きいと言えるでしょう。これらの作業は素人にはちょっと難しいですが、自動車内装専門の工場であれば、どこでも出来る作業です。

W107のダッシュボードって高いんです

’70年代〜’90年代初頭の古いメルセデスで、悩みの一つと言えるのがダッシュボードです。紫外線の影響で、どうしても表面素材が劣化してひび割れてしまうんですね。黒いダッシュボードは比較的丈夫ということが言えますが、青やグレーなどは早期に劣化が目立ち始めます。

通常ダッシュボードが傷んだ場合は丸ごと交換、となるわけですが、問題はその価格。現在W107のダッシュボードの国内定価は約35万円で、今後さらに値上げされる可能性が高い上に、生産そのものは終了しているため、メーカー在庫が終了してしまえばそれまで。となれば、ダッシュボード交換以外の解決方法を探った方が吉と言えそうです。

痛んだダッシュボードを目立たなくする、もっとも手っ取り早い方法は、スピードジャパンから発売されている「EZ COVER」でダッシュボードを覆ってしまうこと。このカバーは目の細かい上質なベロアカーペットで作られていて、見た目の上品さを損わずに痛んだ部分を隠し、ドレスアップ効果も発揮してくれます。同様のマットはアメリカでは定番のアクセサリーで、特に陽射しの強いカリフォルニアでは新旧問わず、多くのクルマがこういったマットをダッシュボードに敷いているのを見かけます。ですからまだダッシュボードが割れたりしていないというクルマでも、ドレスアップを兼ねて予防的に使ってみても良いのではないでしょうか。特に露天保管の車両はダッシュボードの日焼けに要注意です。

また別の方法としては、ダッシュボード補修用のキャップをかぶせて接着するという方法があります。一旦ダッシュボードを外して上手に装着すれば、新品のダッシュボードに交換したのと変わらないくらいの効果を発揮しますが、国内ではあまりこういったパーツが出回っていないのと、そういった作業に長けた業者さんを探すのがなかなか困難という問題があります。’70年代後半以降に発売された車種に比べ、W107はダッシュボードの脱着が極めて大変な車種でもありますので、不慣れな作業者に任せてしまうとトラブルの元になる危険性があります。

ウッドパネルは交換より補修?!

’70年代後半以降採用されたウッドパネルのヒビ割れや退色も、W107にはよくある症状です。予算が許すなら丸ごと新品に交換、がもちろんベストなのですが、W107の場合は製造期間が長かったこともあって、多種多様なウッドパネルが存在しました。もちろん品番が特定出来れば同じウッドパネルが届く可能性が高いわけですが、実際にはもっともポピュラーなタイプに品番が集約されていて、どのパネルでも新品が手に入るというわけではないのです。異なるタイプのウッドパネルであっても、穴が足りなければ開口し、穴が多ければ専用のパネルで塞げば使用可能ということで、メーカーとしては見た目までフォローすることは出来ないというスタンスなのです。

またW107の場合は一枚の大きな木板から実際に部品を切り出しており、車両出荷時はぴったり色が合っていますが、その中の一点だけを他のパネルに替えてしまうと、そこだけ色が合わないといったことも起こりがち。天然木を使ったパネルだけに、そこら辺はシビアだと言えるでしょう。

以上のような理由から、ウッドパネルのに関しては出来るだけオリジナルを使用し、どうしても見映えが悪いという問題があれば、そのパネルだけ専門の業者に依頼してリペアしてもらうのが、もっともリスクが低くコスト的にも有利なのではないかと思います。どの業者が安くて上手いか、といったことに関してはは情報が無いのでご紹介出来ませんが、最近は多くの業者さんが存在するようですので、サンプルなど見比べて判断されると良いでしょう。

もしどうしてもパネルを新品で購入して交換したい、という場合は、現物そのものや写真を用意して注文されることをオススメします。その場合でも、必ず同じパネルが手に入るという確証はありませんので、御注意を。

エアコンはガス漏れと電子部品が鬼門

古いクルマのエアコントラブルの代表格と言えば、やはりガス漏れ。それはW107も例外ではありません。しかし幸いなことに、室内に冷気を出すエバポレーターは比較的丈夫で、この部分からのガス漏れはほとんど無いようです。エバポレーターが要交換となると、ダッシュボードの脱着など作業が大変になりますので、この点は良いところ。じゃあどこから漏れるのか?と言うと、エンジンルーム内のホースが一番痛みやすいようです。これは足回りのゴムブッシュが痛みやすいのと同じ理由で、恐らくエンジンルーム内の高温が原因。ホースにオイル滲みが見られる場合は、交換なり修理なりをしましょう。エアコンの冷媒にはコンプレッサーの焼き付き防止のためにオイルが混ぜてあるため、ガスが漏れるとオイル滲みが見られるのです。

冷媒に関してはW107はR12、つまりフロンガスが基本です。レトロフィットと言って代替フロンであるR134aに仕様替えしている車両もあると思いますが、R134aはR12に比べて圧力が高くなるという特徴があるため、配管類がR12仕様のままでR134aを封入するとなると、十分な量の冷媒を注入することが出来ず、冷えが十分でなくなったり、また冷媒を入れすぎてガス漏れを誘発してしまうということもあり得ます。

最近ではR12と親和性のある代替フロンというのが出回っており、「Cold 12」という商品などはその代表格と言えますが、そういった代替フロンであればR12と変わらない冷却効率を得ることが出来ます。しかしそういったガスの使用は本来メーカーが想定していませんので、使用にあたっては何らかのリスクがあると考えた方が良いでしょう。Cold 12に関しては多くの車両の長期間運用の実績がありますが、それでも私のクルマではR134a用ホースとの相性問題と考えられるトラブルがありました。ですからいくら実績があると言っても、100%ではないということです。使用にあたってもあくまでも自己責任でお願いします。

ガス漏れ以外に多く見られるのは、コントロールパネルの故障とエアコンプレッサーリレーの故障です。これらは回路上の半田付けに問題があり、経年変化で接触不良が起きるのが原因の大半でしたが、生産終了から20年以上が経過し、コンデンサーの容量抜けといった問題も起きる頃です。これらの部品に関しては、今でもちゃんと供給がありますので、必要があれば交換という事になるでしょう。コントロールパネルはフルオートであるクライメートコントロールのパネルが新旧ともに壊れやすく、マニュアルのタイプは壊れにくいと言えます。

また動作には支障が無いけれど、ブロワーから笛の音のような音が聞こえて気になる、というケースも多いと思います。これはブロワーモーターのメタルの摩耗によるもの。本来はこのメタルを外してベアリングにでも交換出来れば良いのでしょうが、残念ながらこの部分は非分解式であるため、簡単には行きません。また油を差したとしても、もともとオイルレスベアリングで注油は不要なメタルであり、音の原因は摩耗ですから、根本的な修理にはなりません。というわけでブロワーモーターAssyの交換が必要となるわけですが、一つ救いなのは前モデルともにファンの付いたモーター本体部は共通であること。モーターに接続されている抵抗付きのハーネスは、エアコンの使用やハンドル位置に応じて多種類があり、その数だけモーターAssyの品番も存在するのですが、現在付いているハーネスに異常が無い場合は、モーター本体だけならどの品番のものでも流用が可能ですので、ディーラーに在庫が無い場合や部品取り車から調達したい場合には、分解してそこだけ流用するという手段もあります。とはいえ、それもまた作業する場合はあくまでも自己責任においてお願いします。

というわけでかなりはしょった説明にはなってしまいましたが、W107に関するメンテナンスのポイントをまとめてみました。後日加筆修正することもありますし、もし是非取り上げて欲しいという内容がありましたら、リクエストをお願いします。可能な限り調べて対応したいと思います。

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