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機械と電気の主従関係

 
車の故障で最悪なのは出先で全く動かなくなってしまうことです。
国によっては辺鄙なところで止まってしまったら命にかかわることだってあるでしょう。

そんな訳で昔も今も何かが故障しても最悪助けを求められるところまでは何とか走れるようなフェイルセーフ機構は設計段階から組み込まれています。

たとえば、今時のベンツの電子制御7速ATなどでは、センサーからの異常を感知すると、その時に入っていたギアに固定してしまって変速しないように制御してしまいます。
ATを完全に破損させてしまって全く動けなくなることだけは避けようという考えです。

もっとも、このケースの場合は、ATの機械的な故障よりも、異常な信号を出したセンサーか、あるいはセンサーからの信号を正常に受け取れなくなったモジュールが原因である場合のほうが圧倒的に多いのですが、電機は正しく機械が故障するんだという設計思想のようです。

一方、90年代初め頃までのKEジェトロニックはこれと全く反対の思想でした。
KEジェトロニックはECUと切り離してもエンジンはそのまま動き、多少ぎくしゃくしながらも車を走らせられることからも分るように、電気の部分をあまり信用していませんでした。




この画像は、冷間時のアイドル回転数を制御するアイドルエアバルブの電圧変化によるポートの空き具合を並べたものです。
冷間時8Vくらいから暖気完了後で4Vくらいの状態でしょうか。
面白いのは 0V、つまり断線してしまった場合には結構口を開けている状態になることです。
電機系が壊れてもアイドリングが維持できるようにという設計です。
実際、これの配線を抜いてしまうと冷間時の始動性はいくらか悪くなって暖気後にはアイドリングは1000rpmくらいのままで下がりませんが、とりあえず問題なく運転できます。

もっとも、このパーツに関しては電気的な不具合よりも汚れ等による固着など機械的な故障の方が数としてはずっと多いようです。

機械と電気の主従関係は入れ替わりましたが、皮肉なことに、メインに据えた部分が正しくて従としたほうが故障するということを前提にした設計なのに、実際にはそのメインどころがぶっ壊れてしまっているケースのほうが多いのは、ちょっと笑えます。


By OZW



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