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三ツ星倶楽部 其之五 W107 500SL 特別編 1/3 エクステリア編

投稿者: 投稿日: 2010年7月17日 – 00:000

構成・撮影/芥川貴之志 撮影/山田裕之

さて、今回からは特別編と題しまして、W107のメンテナンスなどに関する話題をお届けしたいと思います。筆者自身、1997年から後期型の107/500SLを2台乗り継いでおりまして、様々なトラブルやメンテナンスを経験してきました。特に若かりし頃、最初の107を買ったばかりの頃は、ギリギリの予算で購入したこともあって、大変だったものです。修理の必要性は感じても見積りの高さに驚き、ヤナセに行けば門前払いに近い扱いを受け、なんとか自分で海外から部品を調達するすべを開拓して、試行錯誤しながら段々と自分自身でもメンテナンスをやるようになっていきました。そうした体験の中から、多くの107に共通するであろう、維持するためのポイントみたいなものを、かいつまんで紹介してみたいと思います。では初回はエクステリアに関する話題から。

まずはSLのアイデンティティたるソフトトップ!

のっけからSLCオーナーの皆様にはすいませんが、ソフトトップすなわち幌のオハナシ。やはり107は圧倒的にSLが多く、そしてまた幌に関しては多くの方が興味を持っているようです。

まず1つ言えることは、幌は消耗品だと言うこと。馬車の時代から幌車というものは、オープンで乗るのが正式なんですね。幌というのはあくまでもエマージェンシーとして使用するもの。SLにおいても、天気の悪い日や気候が適さない時期はハードトップを着用し、オープンで走行中に天候が崩れた際にだけソフトトップを緊急避難的に使用するというのが、本来のコンセプトなんです。

だから幌に関しては耐久性をそれほど考慮されていないし、痛んだら張り替えるというのが、これまた馬車の時代からの伝統でもあります。近年ではハードトップそのものが開閉するスタイルが主流となってしまい、こうした風情が失われていくのが個人的には残念と感じているのでありますが、ともあれ痛んだ幌はさっさと交換しちゃいましょう。

ソフトトップを交換する場合、幌骨ごとAssy交換する方法と、幌布だけ交換する方法があります。ヤナセなどに行って幌を交換してくださいと言うと、高い確立で骨ごと交換と言われるようですが、これは当然かなりのコストがかかります。やはり主流は幌布だけの交換でしょう。中には割れた窓だけを交換したい、という方もいらっしゃいますが、窓を交換する場合にも幌は脱着しないといけませんし、窓の脱着縫製工賃が別に必要な上、以前の縫製穴から雨漏りするケースが多いようです。幌布を安く入手出来る場合には、丸ごと交換した方があらゆる面で良いと言えます。

幌布だけを交換する場合、純正部品の幌布以外にも社外品を選ぶことが出来ます。現在多く流通しているものは、アメリカの会社が販売しているもので、「ステイファーストクロス」という素材を使用したものと、「ジャーマンクロス」という素材の2種類があります。

ステイファーストクロスは多くの米国車のソフトトップに採用されている素材で、メルセデスベンツ純正のものとはちょっと素材感や色味が異なりますが、大衆車向けに作られている素材ですから価格が安いのが最大の特徴です。ジャーマンクロスの方はその名の通りドイツ車の多くに採用されている素材で、メルセデスベンツ純正の幌もこの素材で作られていますから、見た目はまったく同じ。ただし窓の部分に入る刻印が、メルセデスのものではありません。

筆者のオススメとしてはやはり、社外品のジャーマンクロスを使った幌です。価格的にも純正品より大幅に安く手に入りますし、実際自分のクルマでも使用していますが、性能的にはまったく問題ナシ。ステイファーストクロスの幌を取り付けた107もたまに街で見かけますが、やはり生地が違うせいか少々違和感を感じます。

幌の交換はディーラー等に頼まなくても、専門の業者さんに直接持ち込んでお願いすることが出来ます。iタウンページなどで”幌 内装”などと入力して検索すれば、近くのお店を探すことも出来るでしょう。工賃はお店にもよりますが、5〜7万円といったところが相場のようです。

ちなみに張り替え技術の上手い、下手はもちろんあると思いますが、張り替え終わった自分のクルマの幌がシワシワだからと言って、落胆する必要はありません。張り替えたばかり幌はだいたい波打ってるものでして、そこに水をかけたり、雨が降ったりして、伸縮を繰り返すうちに段々と馴染んでくるんです。ですから、よほど下手な作業をされていない限り、まともに見れる状態に落ち着きます。シートの張り替え等に比べたら、作業者のスキルに左右されにくい作業と言えるのではないでしょうか。

曇ったメッキトリムは交換!

クロームメッキのパーツが多いのは、クラシックメルセデスたるW107の特徴の1つです。バンパーやグリル、エンブレムといったパーツのメッキは非常に堅牢なのですが、ウインドウトリムなどのメッキについては曇りが発生しやすく、白くなっているクルマを多く見かけます。

曇ったメッキは磨けばいい、と思われがちですが、この曇りは表面層と下の層の間に起きるようですので、曇りを除去出来るまで磨き込むのは大変な作業です。またそこまで磨き込んだ場合は、表面層が完全に削り取られた状態になっていますので、耐候性も低下してしまいます。

また再メッキを検討される方も多いようですが、W107のトリムは大変薄い素材なので、一度脱着すると波打ってしまう場合が多々あります。また再メッキ自体、丁寧な磨き作業が必要で工賃はかなり高いものとなりますので、バンパーなどの単価の高いパーツや、部品の供給が無い場合を除けば、部品そのものを買ってしまった方が安い場合が多いと思います。

ですからメッキトリムの曇りの改善に関しては、交換が基本と考えた方が良いでしょう。ディーラーで部品を取ると、点数が増えた場合には高額となるかもしれませんが、並行輸入部品であればかなり節約することが可能です。

ゴムパーツは純正に限る?

ウェザーストリップなど、エクステリアに使用されているゴムパーツは、絶対に純正部品を選びましょう。純正品と社外品を見比べてみると、硬さや形状がずいぶんと違うことがわかります。特にピラーレスドアを採用しているW107は、ドア周りに多くのゴムパーツを使用しており、ドア位置やウインドウ位置を細かく調整してフィッティングさせるようになっていますが、形状の違うゴムパーツを取り付けてしまうと、いくら調整しても絶対に合わなくなってしまいます。

特にSLの場合はソフトトップとハードトップの両方で調整をしなければなりませんので、ゴムパーツは純正部品に限ります。そして調整する場合はハードトップを基本にしましょう。ソフトトップの方は幌骨が動いてある程度調整してくれますので、最初は合わなくても段々と馴染んでくるようです。逆にソフトトップの現状を基本に調整してしまうと、ハードトップに交換した際にドアが閉まらなくなってしまう場合があるので要注意です。

W107が多く輸出されたアメリカでは、数多くの107用部品が流通しており、ウェザーストリップなども安価で買うことが出来ますが、これこそが粗悪な社外部品です。社外部品の危険性については他の項で改めて触れますが、ウェザーストリップに関しても注意が必要です。純正のゴムパーツに関しては、アメリカでもディーラーから仕入れるしかありませんので、安売りしている業者はほとんど存在しないのではないでしょうか。個人輸入などをされる際には、特に注意して頂きたいと思います。

W107の場合、Aピラーのウェザーストリップは大変凝った構造になっています。3種類のゴムパーツを接着した上で、水切りのための布を貼り合わせて作られているのですが、社外品を注文するとただの硬〜いゴムのカタマリがやってくるのです。最近のピラーレス車はドアの開閉時に窓が動いてフィッティングを調整しますが、W107の場合は繊細な調整が命。正しい部品を正しく使うことが、正確な調整をするためには重要なのです。

そして意外と忘れられがちなのが、この部品。はっきり言って紛失しているクルマが多いです。このゴム部品はドアの当たりをやわらげるためのものなのですが、構造に難があって壊れやすく、無くなりがちな部品です。W107をお持ちの方は、ちゃんとこれが付いているか、確認してみて下さい。

次回、機関編(2/3)に続く……

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