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タイヤの進化 その2

 
昨日の続きです。


摩擦力は、F=μmg [N] であらわされます。
μは物質特有の摩擦係数で、同じコンパウンド成分のタイヤが同じ路面を走る場合には、これは一定ということになっています。
平均的なタイヤがドライな舗装路上では、0.8前後といわれますので、ハイグリップタイヤだと1.0くらいでしょうか。
gは重力ですから、これもほぼ一定です。
mは荷重です。
ということは、μもgも一定なのですから、物理上 F( グリップ力 )は、m( 荷重 )にそのまま比例することになります。
ドラッグレースでウィリーさせてスタートするのは駆動輪に最大限の荷重をかけてグリップを上げているわけです。




このことから、昨日書いた摩擦円は、走行状態によって荷重が変われば円の大きさ( グリップ力 )も変わることが分かります。
この図はコーナリング中、遠心力で外側(図の下側)のタイヤに荷重が移動しているので、外側のタイヤのグリップ力が上がり、逆に内側のタイヤのそれが小さくなっていることを示しています。

さっき同じコンパウンド成分のタイヤで同じ条件の路面を走っているときにグリップ力を決定する要因は荷重だけだと書きました。
タイヤの太さは関係ないということになります。
でも、実際にはタイヤを太くするとグリップが上がることがよくありますよね。




横軸が荷重、縦軸が摩擦力をあらわしています。
あるところまでは荷重と摩擦力の関係はほぼ比例関係にあって、最初の図でいえば摩擦円がどんどん大きくなるのですが、途中からあまり大きくならなくなります。
比例関係を維持できる上限は、太いタイヤの(路面との接地面積が広い)ほうが上がるのだそうです。

そもそも、どうして上限があるのかといったことについては、仮説的な理論がいくつも存在するものの完全には解明されていないようです。

ただ、500Eのタイヤを4本とも 115/90R16 みたいなテンパータイヤに付け替えて、コーナー攻めたらマズイだろうというのは何となく分かるはずです。
ブレーキパッドとブレーキローターとの関係も同じで、ブレーキパッドの大きさを10分の1にしても摩擦力は変わらないはずですが、そんなことしたら40km/hくらいからのブレーキングでもフェードして効かなくなってしまいそうだというのは、感覚的には納得できるんじゃないかと思います。


さて、タイヤの摩擦係数はそれほど大きく変わっていないのに、なぜグリップがそれ以上に上がっているのか、という話に戻します。
単純に言ってしまうと、タイヤ剛性が上がって捩れが少なくなり接地面での荷重のばらつきが減ったから、ということのようです。
つまり、グリップ力が上がったのは、タイヤのゴム自体の摩擦係数が高くなったというより、タイヤ全体の構造の進化で、荷重増加と摩擦力が比例する領域が増えたことによります。
言い換えれば、結果的にタイヤ幅を太くしたのと同じような効果になっている訳です。

20年前と比べれば同じサイズのタイヤでも実質的にタイヤ幅が広くなっているのに、そこにまたさらに太いタイヤに履き替えてしまっているとしたら、メーカーが当時設定したサスペンションのままではマッチしなくなるんじゃない?という昨日の冒頭で書いた皆口氏の指摘が、ここでつながるわけです。

マッチしないとどうなるのか、どうすればいいのか、についてはまた気が向いた時に書きたいと思います。



By OZW






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